寄生防ぐ農家の意識を

生育が遅れぎみだが、色づき始めた果実も見られる大和村のスモモ。ミカンコミバエの寄生防止へ収穫期では園の管理が重要になる

「好適寄主植物」のスモモ 果実収穫で注意必要

 ミカンコミバエ緊急防除に基づき奄美大島全域(加計呂麻、請、与路島含む)に設定されていた果樹・果菜類の移動制限区域は先月27日に解除され、農林水産省植物防疫所の検査に合格すれば島外に移動できる。規制品目でこれから収穫期を迎えるのが特産果樹のスモモやパッションフルーツ。このうちスモモはミカンコミバエが好む「好適寄主植物」で果実が熟していくと寄生しやすいことから生産農家は注意が必要だ。

 県内一の産地となっている大和村のスモモ栽培面積は約37㌶、生産農家約150人。今期は1月の寒波の影響などで開花遅れにより現在も生育は例年に比べて2週間程度遅れぎみ。スモモの収穫基準日は5月21日だが、村産業振興課によると着果状況はいいものの色づきはこれからで、集荷は6月になる見通し。

 ミカンコミバエの誘殺数状況は20週連続でゼロとなっているが、スモモなどの収穫期を前にタンカンなど果実の廃棄処分を経験した果樹専業農家からは警戒の緩みを懸念する声が挙がる。奄美市住用町の元井孝信さん=JAあまみ大島事業本部果樹部会顧問=は「一度入ったものを二度と入れることがないよう、国など関係行政機関に対策を注文し任せるだけでなく、果樹農家も気を引き締めて自らの責任で防除や予防対策に取り組まなければならない」とし、気温上昇により「世代交代しやすく、さらに夏場はその期間も早まる。根絶できるかはこれからが山場であり、発生を抑制できず2年続けてタンカンを島外出荷できないとなると、風評被害により顧客が離れ今後の生産が成り立たなくなってしまう。これを防ぐためにも現在の時期の取り組みがとても重要」と指摘する。

 奄美市果樹部会長の平井孝宜さんも「根絶に向けて今が踏ん張りどころ。決して楽観できない。誘殺ゼロが続いても今は発生しやすい危険期間だけに、防除を重ね今後も地域に浸透させていくためにも農家が率先し常に危機感を持ち続けなければならない」と呼びかける。農家の取り組みで具体的に挙げるのが寄生を防ぐ姿勢・意識だ。

 「スモモは完熟手前で収穫している。熟した果実にはミカンコミバエが寄生しやすいだけに、農家は園を野放しにすることなく常に果実の状態に関心を持ち寄生を防止しなければならない。収穫の仕方でも取り残しや果実の園内への放置がないよう、きちんと管理したい。3月には赤く熟したピーマンへの寄生が確認されたと聞いている」(平井さん)。果樹園だけでなく軒先などで栽培されているスモモの果実管理も注意が必要だ。不要なものは廃棄する判断も求められている。

 平井さんが最も懸念するのが、再び誘殺が確認された場合の混乱だ。誘殺が確認されると、その地点から半径5㌔以内は再び特定移動制限区域となり、島外への移動が禁止される。平井さんは「同じ地域で制限区域と区域外が線引きされると対応が繁雑になり、区域外であっても移動がスムーズに進まない。スモモなどの島外出荷に影響が及ぶだけに、このまま全域での誘殺ゼロを継続したい。規制品目を取り扱う選果場周辺にはテックス板(誘引薬剤と殺虫剤を含ませたもの)を多めに設置することも必要ではないか」と語る。

 収穫にあたりスモモへのミカンコミバエ寄生を防ぐ取り組みについては村産業振興課も関心を示す。園地指導、出荷協議会、目ぞろえ会などの機会をとらえ農家に説明していく方針だ。

 関係行政機関による①航空防除②地上でのテックス板設置・更新③果実調査(ミカンコミバエが寄生する可能性がある寄主植物の調査と除去)―といった防除の積み重ねと同時に、寄生・発生を防ぐ農家の姿勢や取り組みが早期の規制解除や根絶を左右することになる。
(徳島一蔵)