徳之島で奄美群島サンゴ礁シンポ

「白化現象」など諸報告や意見交換を行った奄美群島サンゴ礁シンポジウム=21日、徳之島町

負の要因「元から断つ取り組みを」
局所的「白化現象」報告も

 【徳之島】サンゴ礁の現状や保全取り組みを広く周知し、保全意識の向上を図る「奄美群島サンゴ礁シンポジウム2016」(奄美群島サンゴ礁保全対策協議会主催)が21日、徳之島町生涯学習センターであった。基調報告やオニヒトデ対策、白化現象の現状など報告を交え、モニタリング継続で負の要因を「元から断つ」取り組みの大切さも提起。国立公園指定や世界自然遺産登録へのサンゴ礁保護対策もアピールした。

 2年に一度開催、今回のテーマは「未来に残そう!島々のサンゴ」。自然保護活動家や一般住民など約50人が参加。同協議会会長の島袋修奄美市環境対策課長は「サンゴ礁の海は様々な生き物が集まり、私たちに安らぎや多くの恵みを与える宝物。赤土流出、地球温暖化などで減少危機にあるが、国立公園と世界自然遺産を見すえて保全と活用を考える契機に」と要請。

 喜界島サンゴ礁科学研究所の山崎敦子所長が「造礁サンゴの年輪に刻まれる海の歴史」で基調報告した。沖縄県石垣島も例に、ハマサンゴのボーリング資料の蛍光・エックス線撮影による年輪や成分分析などから抽出した過去の降水量、窒素成分の蓄積など科学的調査データも紹介。80年代に水田がサトウキビ畑に変わり化学肥料が多用された「ローカル・陸の環境、土地利用の変化」なども例示し、「サンゴの環境を知るには過去の指標を調べることも大事」とも強調した。

 サンゴ礁保全の活動報告では、▽興克樹氏(奄美海洋生物研究会会長)が「オニヒトデ小規模発生海域における保全活動」▽池村繁氏(工房海彩代表)が「徳之島におけるサンゴ礁保全の取り組み(異常白化)」▽渡辺暢雄氏(海の再生ネットワークよろん事務局長)が「与論島沿岸海域におけるサンゴ礁の現状と課題への取り組み」▽出羽尚子氏(いおワールド鹿児島水族館)が「鹿児島県本土におけるサンゴ保全活動」について報告した。

 興氏は98年のサンゴ白化、00年~07年のオニヒトデ大発生の歴史と駆除対策などを回顧し、奄美市大浜海岸域の例では「オニヒトデが食べる量より、回復スピードが速くなっている」とも報告。池村氏は、徳之島町畦=あぜ=海岸リーフ内礁池で局所的に確認されたエダサンゴの白化現象(原因不明)について「回復には十数年かかる。塩分濃度や水温も含め地元との情報共有が大切」。

 与論の渡辺氏は「(船の)アンカーも打てないほど回復しているところもあるが、礁池内は回復が遅い」。〝自然の摂理への一喜一憂〟を戒めつつ、施肥過多や畜産ふん尿流入といった負の要因は「元を断ち排除。リーフチェック、モニタリングが大事」と強調した。

 オブザーバー参加していた北海道大学理学研究院のサンゴ礁地球環境学講師の渡邊剛氏は、環境面で「中国の発展が進むなか、これからはグローカルな次の戦略をどうするかに移る時期。奄美群島については50年後も生物多様性の拠点として残せる」と感想を述べていた。