大島 延長で惜敗

【準々決勝・鹿児島実―大島】延長10回まで投げ抜き、1失点と好投した大島のエース渡=県立鴨池

シード鹿実に0―1
NHK高校野球第2、3日

 【鹿児島】第58回NHK旗争奪鹿児島県選抜野球大会第2日は22日、鹿児島市の県立鴨池、鴨池市民、両球場で2回戦6試合があった。第3日は23日、県立球場で準々決勝2試合があった。

 奄美勢の大島は2回戦で加治木工に逆転勝ちし、準々決勝で第1シード鹿児島実と対戦した。大島のエース渡、鹿実・泰、両先発の好投で九回まで両者無失点の緊迫した投手戦。延長十回表、鹿実に犠飛で先制点を許すと、その裏、三者凡退に打ち取られ、好投の渡を打線で援護できなかった。

 第4日は24日、県立球場で準々決勝残り2試合があり、ベスト4が出そろう。

エース渡が好投
大島 夏への「試金石」に

160523大島ベンチ前

【準々決勝・鹿児島実―大島】8回表二死満塁のピンチをしのぎ、力投の渡①を歓喜で迎え入れる大島ベンチ=県立鴨池

 マウンドのエース渡秀太は「良い投球ができている」自覚があったという。シード鹿児島実を相手に七回までは散発3安打、三塁も踏ませない、ほぼ完ぺきな投球だった。

 前日の加治木工戦に勝った後、渡邉恵尋監督は「鹿実を相手に試してみたいことがある」と話していた。渡の直球の最速は130㌔台。鹿実クラスの強力打線を球威だけで抑えることは難しい。「速い球をより速く見せる」(渡邉監督)ために、緩急を生かした投球術を工夫することだった。

 立ち上がりに重用したのはカーブ。110㌔ない球速のカーブをうまく織り交ぜることで、直球と20㌔の球速差が生きてくる。相手打線が的を絞り切れず「打ち上げたり、見逃しや空振り三振がとれた」ことに、渡は手ごたえを感じながら投げることができた。注目の強打者・綿屋を5打席凡退で退けた。

 力投を続けるエースにベンチも一丸となってサポートする。八回、先頭打者に初めての長打を打たれた直後、二死満塁となった直後と2度の伝令を送った。具体的な指示よりも「肩に力が入っているのをリラックスして間をとらせた」と渡邉監督。満塁のピンチもしのぎ、九回まで鹿実打線に1点も与えなかった。

 渡が力投して鹿実打線を抑えた一方で、大島打線も鹿実の右腕・泰を打てなかった。球速はないが、外角を中心にボールの出し入れをうまく使った投球を崩せなかった。七回は二死一二塁と絶好の先制機を作り、勝負の代打・徳永を送ったが、意表を突く一塁けん制アウトで生かせず。八回は一死から出塁したが、送りバント失敗と拙攻が続いた。延長十回は遊撃手・大山竜生主将のエラーがきっかけでピンチを招き、決勝点を許した。「終盤の小さなミスを見逃してくれなかった」と大山主将は唇をかんだ。

 加工戦、鹿実戦と戦って「夏に向けての試金石になった」と渡邉監督。鹿実クラスの強豪が相手でも十分渡り合える自信をつけると同時に「バント、走塁など細かい野球を詰めていくこと」(大山主将)という課題がみえた。「甲子園の夢をかなえるためには、このクラスのチームに勝たないといけませんから」。エース渡は来る夏の挑戦に思いを馳せていた。
(政純一郎)