「飛び込み」警戒も必要

テックス板の設置・更新など防除対策の積み重ねでミカンコミバエの誘殺ゼロが続いている。今後も対策の徹底が欠かせない

収穫期果実への寄生で
22週連続で誘殺ゼロ

 農林水産省植物防疫所は25日、奄美群島におけるミカンコミバエの誘殺状況(5月23日現在)を発表した。最新週の5月17~23日までの誘殺状況は緊急防除区域内外ともにゼロ。緊急防除区域の奄美大島(加計呂麻・請・与路島含む)の誘殺ゼロは22週連続。同島全域が「特定移動制限区域以外」となり、移動制限が解除され、植防の検査に合格すれば規制対象品目でも島外出荷できる。しかし収穫期の果実への寄生では、「飛び込み」への警戒も必要だ。

 緊急防除区域の奄美大島の誘殺は、昨年12月15~21日の週に2匹(宇検村と瀬戸内町で1匹ずつ)確認されて以降、ゼロが続いている。喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島の緊急防除区域以外は12月1~7日の週から25週連続誘殺ゼロ。

 奄美大島では島外出荷に向けた植防による移動検査が25日まで行われた。検査対象物は果実ではなく箱や袋、パックなど出荷に使用する資材。合格者に証明書となるラベルが配布されており、申請農家は配布を受けているという。

 規制品目で間もなく収穫期に入るのが特産果樹のスモモとパッションフルーツ。ミカンコミバエが好む「好適寄主植物」のスモモは果実が熟していくと寄生しやすいとされている。テックス板(誘引薬剤と殺虫剤を含ませたもの)の設置・更新などにより世代交代した成虫を寄生させない防除の取り組みのほか、今後予想される成虫の飛び込みも警戒が欠かせない。落下果実の適正処理の徹底を含めて収穫期は生産農家の適切な園管理が求められそう。

 農水省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は「メス成虫の活動を示す産卵された寄生果実等が年末にかけて確認され、世代交代の危険性は5月中旬あたりが『リスクが高い』とみられていたが、この期間を過ぎ少し光が見えてきたのではないか。しかし緊急防除の解除・根絶に向けて引き続き警戒し、防除活動を徹底しなければならない」と指摘する。

 今後、7月上旬までの3世代相当期間誘殺ゼロが続けば奄美大島の緊急防除区域は解除される。現在の誘殺ゼロの継続が期待されているが、昨年6月30日に確認されたように島内で世代交代した成虫以外の、他発生地域からの飛び込みが誘殺される可能性もある。世代交代成虫と飛び込み成虫を分ける形で適切に判断することも緊急防除解除では重要になりそうだ。農水省は専門家の意見も参考にして判断していく。