緊急防除の解除、完全根絶に向けて地域が一つになっての寄主植物の除去は今後も欠かせない
農林水産省消費・安全局は31日、第3回ミカンコミバエ種群の防除対策検討委員会を開き、奄美大島で実施されている緊急防除の解除方針などについて有識者(委員)から意見を聞いた。それにより有識者が「発生はほぼ終息しているものと推測される」と判断、このまま誘殺が確認されなければ緊急防除は「7月9日にも解除」が明確に示された。生産農家・関係行政機関からは喜びの声があがる一方、「完全根絶までまだ油断できない」として今後も防除対策の徹底を求める声もある。
検討委では、▽ミカンコミバエ発生状況=誘殺(前回検討会議の1月19日以降)・寄生果(3月22日のグアバ1果以降)が確認されていないのは、テックス板の設置・散布や寄生果実の除去などのこれまでの防除効果によるもの。本虫が存在している可能性は否定できないものの、発生はほぼ終息と推測。これまで実施されてきた防除対策は概ね妥当▽緊急防除解除に向けた根絶確認=今後、最後の誘殺から3世代相当期間(奄美大島で最後にミカンコミバエの誘殺が確認された12月21日から3世代相当期間が経過するのは7月9日)トラップによる誘殺がなければ、有識者の意見を踏まえ根絶を確認し、緊急防除を解除する―との見解が示された。
果実、果菜類の害虫・ミカンコミバエの侵入で奄美大島では、国が昨年12月13日から緊急防除に関する省令を施行。これに伴い移動制限(誘殺確認地点から半径5㌔以内を規制対象品目の移動制限区域に設定)が実施されてきたが、4月27日付で移動制限区域が解除され、植物防疫所の検査に合格すれば規制対象品目でも島外に出荷できるようになった。緊急防除が解除されると、こうした検査の必要もなくこれまで通り自由に生産者などは島外出荷できる。
解除の見通しが明らかになったことについて、JAあまみ大島事業本部果樹部会の岡山俊一会長は「一つクリアしたという思いだが、完全な根絶を目指さなければならない。昨年の状況からミカンコミバエの果実への寄生は夏から秋にかけての8~10月の3カ月間に集中する可能性がある。特に好まれるグアバへの寄生に警戒しなければならず、こうした寄主植物の除去は今後も所有者の理解と協力のもと集落ぐるみで徹底したい」と指摘し、引き続き油断せず「生産者、関係行政機関、地域を含めて一体となり協力体制の維持をお願いしたい」と訴える。
野菜農家でもあるJA生産部会の原田学会長は「ピーマンやトマトなどの野菜は地元市場への供給が主体だが、カボチャやインゲンなど島外に出荷している品目もある。緊急防除が早期に解除され、島外出荷がスムーズに展開できるようになってほしい」と語る。野菜の取り扱いにあたっては熟していくと寄生しやすくなることから、収穫放置などがないよう寄生を防ぐ取り組みを呼びかけているという。
行政機関も安堵する。県大島支庁農林水産部の東洋行部長は「緊急防除解除に向けてめどが設定されたことは非常に喜ばしいこと。スモモに続きパッションフルーツやマンゴーなどの収穫を迎えるが、解除されると観光客や地元住民も自由に島外に持ち出すことができる」と歓迎しながらも、解除に向けた防除対策はこれまで通り徹底していく。誘殺ゼロの継続が解除に近づくからだ。「6月13日には第5回目となる航空防除を奄美大島で計画している。7月の解除に向けてしっかりと防除していきたい」(東部長)。
今後の防除対策については農水省も重視する。鍵を握るのが連携だ。「県および市町村は、平時より、地元住民と連携し、ミカンコミバエの繁殖源となり得る寄主植物を把握し、不要な果実の除去に努めることが重要」。これは生産農家代表である岡山さんの主張とも重なる。
解除を成し遂げ、さらにその先の完全根絶に向けて到達しなければならない部分が見えてきたのではないか。トラップ増設など行政主導の侵入警戒体制強化と同時に、行政と地域住民が連携しての防除対策は引き続き重要性を増していると思う。
(徳島一蔵)