奄美群島の海域で初記録

160604鹿大島嶼研究 (1)

奄美群島で初確認となったコモチハナガササンゴ=提供写真=

「コモチハナガササンゴ」
開発などによる環境悪化懸念も

 鹿児島大学、宮崎大学、瀬戸内海洋生物研究所の合同調査によりこのほど、奄美大島と加計呂麻島沿岸で「コモチハナガササンゴ」の生息が確認された。5月1日付の鹿児島県動物愛護協会発行の学術誌『Nature of Kagoshima』にも掲載されている。

 コモチハナガササンゴはインド・太平洋の熱帯域に広く分布するが、閉鎖的な海域の柔らかい基質に偏って生息する珍しい種。国内では八重山諸島や沖縄諸島などでも記録されている。

 同種は、群体底面はなめらかで、岩盤などの固い基質には固着せず、柔らかい泥砂底で生息できる。また、多くのイシサンゴ類が行う繁殖行動である放精放卵行動とは違い、群体の表面から小さな娘群体を直接発生させ、砂や泥の上へ剥がれ落ちて成長することで増える。イシサンゴ類は国内で400種類以上生息するが、同種のように砂泥域に生息し、娘群体による増殖を行う種はほとんど知られていない。

 今回の調査では、大島北部笠利湾内と大島海峡の2カ所で群体を発見・採集しており、奄美群島全域では初記録。大きなものでは5㍍ほどの群体もあったという。

 このコモチハナガササンゴは観賞用として売買されていることもあり、鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室の藤井琢磨特任助教は「販売を目的とした乱獲や、埋め立てなどの沿岸域の開発で生息環境が悪化すると減少が懸念される。海域の生物多様性を考える上でも、分布域や生息環境の詳細な把握は重要。今後も継続して調査を続ける必要がある」とした。