連携協定を結び、固く握手を交わした朝山奄美市長=右=とGMOペパボの佐藤社長
情報通信産業の振興を重点分野に位置づける奄美市は1日、島での多様な働き方を支援する目的で、インターネットサービス運営会社「GMOペパボ㈱」=本社東京都・佐藤健太郎代表取締役社長=との連携協定を結んだ。
同社サービスを島内で普及・活用し、紬加工品などハンドメイド商品を島外にも発信・販売しようとする個人(フリーランス)の試みなど支援。島にいながらも働きやすい環境づくりや、人材育成を進めていく。
「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」を社のミッションに掲げるというGMOペパボは、「個人の自己表現、情報発信などインターネット上での表現活動をインフラあるいはアプリケーションとして提供している会社」(佐藤社長)。日本最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」をはじめとした個人向けインターネットサービスを提供し、これまでに約900万人が利用している。
これに対して奄美市は外海離島の不利性を克服できる産業として情報通信産業の振興を重点分野に位置づけており、昨年「フリーランス(企業に属さない個人の働き手)が最も働きやすい島化計画」を策定。「子育てしながら年収150万円のフリーランス育成」など掲げ、各種施策に取り組んでいる。
今回、同社が掲げるビジョンと、奄美市の施策の方向性が一致し、協定締結に至った。鹿児島市出身の佐藤社長、また同席した栗林健太郎執行役員CTOは奄美市名瀬出身で、鹿児島と縁がある社員も多く、「そのことも、互いの信用・信頼をつないだ一因」(朝山毅市長)という。
佐藤社長は「私たちは2003年の創業以来、インターネットは個人が自分の思いを表現し、やりたいことを実現するためのツールと考え、サービスを提供してきた。その考えに基づき、『自分たちの活躍する場をインターネットで見いだしてほしい』との思いから、今回の奄美市との協定を締結させていただいた。行政と一緒に取り組むことで、就業機会の創出にもつなげられると思っている」と述べた。
佐藤社長は同社サービスを有効活用するためのセミナー開催のほか、当面の間、サービスの無償提供も行い、島内に同社サービス利用者を拡大していきたい考えを明らかにした。
朝山市長は同社の協力に感謝を述べるとともに、「インターネットの時代に即した形で、島の潜在化した資源を全国に発信していきたい。この取り組みが雇用の創出、移住・定住促進、子育て支援など地方創生の推進につながることを期待したい」と話した。
同市がフリーランス支援等を目的にIT企業と連携協定を結ぶのは昨年のランサーズ㈱=本社東京都=に続いて2例目。奄美市とペパボは今後、連携して市民への同社サービスに関する情報発信や、セミナー開催による人材の育成など、フリーランス支援を展開する。