徳之島、出水工に競り勝つ

【2回戦・徳之島―出水工】1回表徳之島一死三塁、4番・川が中前適時打を放つ=鴨池市民

奄美、善戦及ばず
全国高校野球鹿児島大会第3日

【鹿児島】第98回全国高校野球選手権鹿児島大会第3日は4日、鹿児島市の県立鴨池、鴨池市民の両球場で2回戦6試合があった。

奄美勢は徳之島が出水工に1点差で競り勝った。第1シード鹿児島実に挑んだ奄美は中盤まで競り合ったが、八回コールド負けだった。

第4日は5日、両球場で2回戦6試合がある。奄美勢の対戦は組まれていない。

◇2回戦 =県立鴨池=

奄美
00000000 0
10001302 7
鹿児島実
   (八回コールド)
【奄】蔵―中原
【鹿】丸山、泰―井戸田(貴)
▽三塁打 板越、土井(鹿児島実)

【評】初回に4番・綿屋の適時打で先制された奄美だったが、先発・蔵が後続を絶ち、五回までは0―2とロースコアの展開に持ち込んだ。三回までパーフェクトに抑えられていた打線は四回に3番・古木が初安打。五回以降、毎回走者は出すも続かず、二塁が踏めなかった。六回、エラーをきっかけに3点を失う。八回は4連打を浴び、7点差となってコールド負けだった。

奄美・下野政幸監督 今までで一番良い試合の入り方ができた。中盤までロースコアは狙い通りの展開。打者は積極的に初球から振ってくれて、成長を感じた。

◇同 =鴨池市民=

徳之島
200010000 3
010000001 2
出水工
【徳】原―太良
【出】一森、遠矢―新森、鶴田
▽三塁打 永野(徳)▽二塁打 福田(出)

 【評】徳之島は初回、無死二塁から2番・松山が左前打。処理を誤る間に二走・永野が先制のホームを踏む。盗塁とけん制悪送球で更に好機を広げ、4番・川の中前適時打で2点目を挙げた。五回には二死一三塁から重盗を決め3点目。その後追加点は奪えず、九回二死から長打を浴びて1点差まで詰め寄られたが、先発の原を中心に粘り強く守り切った。

伝令の有効活用ピンチを守り勝つ

徳之島

【2回戦・徳之島―出水工】9回裏、幸(10)の伝令を聞く、徳之島内野陣=鴨池市民

高校野球では、9回までに3度守備のタイムをとって伝令を送ることができる。徳之島はこの3回の伝令を有効活用し、1点差で守り勝った。

1度目は六回裏一死一二塁の場面。1年生三塁手・仁礼がエラーした直後であり「間をとって気持ちを切り替える」ために田村正和監督は背番号10の幸夢丸をマウンドに走らせた。指示はアウトを1つずつ確実にとること、仮に同点に追いつかれても終盤勝負すればいいと開き直ることなど。加えて「野手の顔に笑顔がない」と感じた幸は円陣をスルーするボケで笑わせた。

力投を続けていた原良樹は「チームのムードメーカーが来てくれて、気持ちが落ち着いた」。更に満塁とピンチは広がったが、一塁手・松山がゴロに飛びつき、遊撃手・伊宝が落ち着いて遊ゴロをさばいてピンチを切り抜けた。

最大のピンチは九回。一死一塁から併殺、ゲームセットのはずが、二塁手・中原が握りそこなって送球が遅れ一塁のアウトが取れなかった。切り替えて次の打者に集中すべく伝令を送ったにも関わらず、初球を右中間に運ばれる。1点差に迫られ、二塁手・中原の中継が乱れ三進を許した。もう一度切り替えるために最後の伝令を送った。

 「2度自分がミスしたから、次も自分のところにくる」と中原陸は予感した。打撃不振でチームに貢献できていない分「得意の守備でこれ以上足を引っ張るわけにはいかない」と次打者の初球に集中し直す。予感通り、中原のもとへのゴロ。イレギュラーする難しい打球だったが冷静に対処し、勝利を締めくくるアウトをとった。

 昨秋、今春と終盤まで競りながら守備で崩れて、コールド負け。この1年間の県大会で九回まで試合ができなかった。その課題をようやく克服できた。次は第2シード樟南戦。原は「きょう以上に厳しい戦いになるけど、もう一度気持ちを締め直し、食らいついていきたい」と決意を固めていた。     (政純一郎)

自分と仲間を信じて真っ向勝負

奄美・蔵大樹投手

第1シード鹿児島実に挑む大一番の先発が背番号10の2年生右腕に託された。

第1シード鹿児島実に挑む大一番の先発が背番号10の2年生右腕に託された。

立ち上がりは「緊張した」。先頭打者には3連続ボールでストライクが入らない。エラーも絡み、プロも注目する4番・綿屋に先制適時打。気持ちが切れれば、一気にワンサイドで押し切られてもおかしくない展開だったが、ここから立ち直る。

「周りの野手が声を掛けてくれた。バックと自分を信じて真っ向勝負する」覚悟ができた。二回から四回は無失点、五回まで2失点は彼我の戦力差を考えれば上出来といえる。2打席目以降、綿屋とは3度対決したがすべて打ち取った。勝負球は直球。「プロ注目の打者を抑えられて、自信になった」。

入学当初から、下野政幸監督は「高い能力がある」と言い続けていたが、それを本気で開花させようと取り組んでいるように見えなかった。冬のトレーニング期間中、奄美にキャンプに来ていた社会人チームの野球教室に参加。社会人のコーチから「君なら140㌔ぐらいのボールはすぐに投げられるようになる」と言われて、初めてその気になった。

肩に負担の少ないスリークオーターから外角低めに決まる直球が投球に柱になった。タイミング外すスライダーを覚え幅が広がった。先発の柱として使える目途がついたのが1カ月ほど前だった。

六回にエラーをきっかけに3失点。七回は3番・追立、4番・綿屋、5番・中村、鹿実の誇る中軸3人を飛球で打ち取った。何とか九回まで試合をしたかったが、八回裏に4連打を浴びて無念のコールド負けだった。この回だけは鹿実の力強さを感じ「何もできなかった」悔しさを噛みしめた。「来年夏までにもう一度身体を鍛えて、抑えられる投手になりたい」と誓っていた。    (政純一郎)