徳之島ダム「畑かん通水」をテープカットで祝い合った関係機関・団体の代表ら=21日、天城町
スプリンクラーによる畑かん実施区と、無かん水区ほ場間のサトウキビの生育差に見入る関係者
【徳之島】国営かんがい排水事業徳之島用水地区で完成の「徳之島ダム」(有効貯水量730万㌧)を水源とする待望の「畑かん通水式」が21日夕、受益地の一つ天城町天城の「第1大和城地区」であった。1997年度の事業着手から19年。国・県・3町行政など関係機関・団体、農家代表らでテープカットし、「自然任せの不安定な農業からの脱却」「儲かる農業」への振興飛躍に期待を寄せ合った。
同国営事業では昨年3月までに徳之島ダムが完成、同年5月からは総延長128㌔に及ぶ送水管とファームポンド(12カ所)の通水試験を進め今年6月末でほぼ終了。同試験に併せて同3月からは伊仙町阿権の散水モデルほ場を皮切りに畑地かんがいの一部通水も開始していた。
同ダム排水の畑かん受益面積は、徳之島の耕地面積の半分に相当する3451㌶。受益者組織の徳之島用水土地改良区(新納啓武理事長、組合員対象約3750人)は今年5月以降、散水開始の前提となる受益地区単位の水利用組合の設立(30~35組織を予定)も進めている。
国営付帯事業として県が15年度末までに取り組んだスプリンクラーなど末端畑かん施設の整備済み面積と、水利用組合設置済み地区は▽天城町=浅間、第一大和城、松原▽徳之島町=南原▽伊仙町=木之香・阿権地区で設立。近く散水開始予定の徳之島町尾母地区を含む全体面積は計239・3㌶(同意済み)を予定している。
現地ほ場であった「畑かん通水式」には、金子万寿夫衆院議員や国土交通省国土政策局の山本知孝特別地域振興官なども含め約100人が出席。大久幸助・徳之島地域農業総合対策推進協議会会長(天城町長)は式辞で「河川の表流水だけでは、夏場の干ばつ時に使う水量がなく、自然任せの不安定な農業経営を強いられてきた。梅雨明け後の干ばつ、台風・季節風の潮風害など対策には安定した水源の確保が永年の懸案だった。畑かん水を利用することで儲かる農業の実現へ」と期待。
経過報告で、寺村伸一九州農政局徳之島用水農業水利事業所長は、ダム下流への小水力発電施設の建設で17年度中に国営事業の全てが完成見込みであることも報告。室谷恵一県大島支庁徳之島事務所長は、国営付託事業で県が継続する畑かん施設整備の推進に一層の理解と協力も呼び掛けた。
関係機関・団体の代表らテープカット。農家代表で第一大和城地区水利用組合の西松和茂組合長(68)は「早くも飼料作物の収量が倍増した。小作地や高齢化などを理由に理解(畑かん施設整備)いただけない方はまだまだいる。個人的には、通水開始があと5年早ければ、サトウキビ減産の悩みもなかったと思う」と話した。
この後、会場を天城町役場ユイの里ホールに移して祝賀会を開いた。