【鹿児島】第97回全国高校野球選手権鹿児島大会第15日は23日、鹿児島市の県立鴨池球場で準決勝2試合があった。
第1試合は第1シード鹿児島実が12安打10得点と打線爆発で志布志を圧倒した。第2試合は、九回裏に2点差を追いかける川内が6番・假屋原の2ランで同点に追いつき延長戦へ。十三回に2点を勝ち越した第2シード樟南が3時間21分の死闘をものにした。
最終日は24日、同球場で午後1時5分から鹿実―樟南の決勝がある。
【準決勝・鹿児島実―志布志】3回裏鹿実一死二塁、4番・綿屋が右越え2ランを放つ=県立鴨池
鹿児島実がノーシードから勝ち上がった志布志を鎧袖一触。12安打10得点と打線が効率良く得点し、1時間30分のスピードゲームで、夏連覇に王手をかけた。
初回、今大会絶好調の2番・佐々木の左中間三塁打で口火を切り、3番・中村の犠飛で先制する。三回には4番・綿屋樹主将に今大会初アーチが飛び出した。「まだ身体が開いて突っ込んでしまっていたけど、うまくスタンドに行ってくれた」と綿屋。綿屋が打てばこのチームが乗る。三、四回で集中打を浴びせ、一気に寄り切った。
準決勝まで2日間の準備期間があったが「選手たちが何をすべきかを分かっていて、良い雰囲気で練習ができていた」と宮下正一監督。相手がノーシードの県立校といえども、スキを作ることなく万全の準備をして試合に臨んでいた。志布志のエース遠矢に関しても「カーブでも、スライダーでも、見なくても分かるぐらい徹底して研究した」(宮下監督)。
ここまで危なげなく勝ち上がっているように見えるが「監督さんからは『野球が軽い』と言われ続けた」と綿屋主将。準々決勝の薩南工戦、けん制悪送球で失点したのはまさしく自分自身の甘さだと痛感し、慢心することなく練習に打ち込むことができた。決勝の相手は最大のライバル・樟南。「どこが相手でも準備を万全にして、自分たちの野球をやるだけ」と静かな闘志を燃やしていた。
(政純一郎)
【準決勝・川内―樟南】延長13回表樟南一死二塁、7番・石澤の右越え二塁打で二走・吉内が生還、5―3と点差を広げる=県立鴨池
九回表に2点を勝ち越し、このまま樟南が勝ち切るかと思われたが、その裏に同点2ランを浴びる。「まさか打たれるとは思わなかった。打った相手がうまかった」(前川大成主将・金久中卒)。樟南としてはサヨナラ負けもありうる展開だったが、最後まで粘り強く戦い抜き、3時間21分の死闘を制した。
同点2ランで流れは一気に川内に傾きかけていたが、前川主将は「甲子園に行くまでには、絶対に1度はこんな苦しい試合があると予想していた」。思い返せば、昨秋の九州大会準々決勝の日南学園戦、序盤リードしながら中盤で同点に追いつかれ、終盤勝ち越し本塁打を打たれた。「甲子園がかかる試合」で、一瞬の気持ちの緩みが敗戦につながった轍を、二度と踏むまいという意気込みがあふれていた。
エース浜屋は今大会初失点を喫し、延長戦で球数は150球を超えていたが、最後まで強気の投球を崩さず、192球を投げ切った。無失策の堅守も崩れなかった。延長十二回裏を久々に三者凡退で切り抜けると、直後の十三回に5番・吉内、7番・石澤の適時打で勝ち越すことができた。
苦しい展開を支えるモチベーションになったのは「こういう試合をものにするために、苦しい練習を乗り越えてきた」(前川主将)という想いだ。2ランを打った6番・假屋原を右飛で仕留めて勝利しても、歓喜を爆発させることはなかった。「浮かれている場合じゃない。すぐ整列しようと僕が声を掛けた」と前川主将。決勝は最大のライバル、強打の鹿児島実が待ち構える。「打線は水物。最後は守りのチームが勝つ」と真っ向勝負を挑む決意を固めていた。
(政純一郎)
九回表一死一三塁。スコアは同点だが、三回以降ほぼ3人ずつで打ち取られていて、得点圏にすら走者が進めていない。一方、川内は七回に同点に追いつき、勢いに乗っている。絶対にものにしたい場面を、山之口和也監督は朝日中出身の3年生、背番号20に託した。
「初球から狙っていた」。1ボールからファーストストライクを振り抜くと、中前に抜ける起死回生の適時打になった。続く8番・浜屋の犠飛で2点差とし、これで勝ち切れると思ったが、その裏、まさかの同点2ランを浴びて延長戦に。ベンチで仲間の戦いを見守るしかなかったが「うちは投手がしっかりしている。絶対に勝ってくれると信じていた」。
ベンチ入り20人に選ばれたのは、3年間で今大会が初めてだった。最後の夏にベンチに入れるかどうか、当落選ギリギリのところにいたが、「夜の自主練でも最後まで黙々とバットを振っている」姿が山元一矢コーチの目に留まった。チームの裏方仕事でも、嫌がらずにコツコツとこなすところに光るものを感じ、山之口監督に「ぜひチャンスを与えて欲しい」と進言。練習試合で結果を出したことで、ベンチ入り最後のナンバーを勝ち取ることができた。
初戦の鹿児島情報戦の代打が「公式戦デビュー」。ここでも中前打を放っている。チーム浮沈のカギを握る場面で、託された2回目の抜擢にも見事に応えた。「最後の最後でチャンスをつかんだ選手が、良い仕事をしてくれた」(山元コーチ)。苦しみながらも延長戦をものにして、3年ぶりの夏・甲子園への挑戦権を得た。「絶対に勝って甲子園に行く!」。願いはただ一つだ。
(政純一郎)