「奄美鮮魚」ブランドへ

超低酸素水につけて、沖縄への出荷準備に取り組む奄美漁協

鮮度保持確立 羽田市場にも出荷
奄美漁協、超低酸素水活用

 徹底した鮮度保持にこだわり、島内はもちろん沖縄のスーパーにも新鮮な魚を卸している奄美市笠利町の奄美漁業協同組合(柊田謙夫代表理事組合長)。2015年度から導入した超低酸素水(ウルトラファインバブル)を活用することで更なる鮮度保持を確立し、7月からは奄美で初めて羽田空港内の羽田市場への出荷を開始。「奄美鮮魚」としてブランド化し、全国で奄美の魚が消費される機会が広がると組合員らの士気も高まっている。

 同漁協の笠利地域(出荷メンバー20隻)では、14年度から沖縄県で小売店やレストランなどを大規模に展開する㈱サンエーと相対取引を実施。沖締め(活締め・血抜き)を徹底し、鮮度保持にこだわったことが評価され、今では20種類以上(14年度は5~6種)の魚を卸しているという。

 さらなる鮮度保持を目指した時、テレビ番組で特集が組まれていた㈱ナノクス(本社・北九州)の超低酸素水に着目。県内の漁協では初めて、「ウルトラファインバブル発生装置」を導入(事業費250万円)した。同装置は海水中の酸素量を減らし、超低酸素状態を作り出すもの。超低酸素水の中に魚を入れておくと、微細な気泡が魚の内臓までコーティングし、魚の酸化と菌の発生を防ぎ、高水準な鮮度保持につながる。同漁協では効果を確認するため、1週間と2週間経過した魚の試食会なども実施してきたという。

 沖締めし、超低酸素水に入れることで、さらに鮮度が落ちにくくなったことなどから、7月からは羽田市場への出荷も決定。現在はチダイやムロアジ、サザナミダイなど5~6種類の魚に「奄美鮮魚」のステッカーを貼って出荷しているという。

 サンエーとの取引や羽田市場への出荷は組合員の安定収入にもつながっており、同漁協の原永竜博参事は「沖縄との取引も、漁協としてある程度の鮮度を保っていたことが注目された結果。沖締めは漁業者にとっても手間がかかるため、行わない船もあった。だが、鮮度保持のために徹底したことで取引が続き、奄美フェアも開いてくれる。いまは取扱い魚種も増え、年間通して見たら結果的に安定収入につながっていた」と説明。

 「奄美鮮魚」のブランド化については、「組合員の方から『ブランド化したい』という意見が出てきた。今では組合員一人ひとりの意識も変わり、漁協が活気づいている」と語った。

 超低酸素水は魚種によって4月から試験的に導入してきたが、近日中には島外出荷分と一部を除いた島内出荷分すべてで利用するという。