誘殺情報平時も公表

植物防疫所のホームページに掲載されている「ミカンコミバエ種群の誘殺状況」

頻度下げも調査と同時に
生産農家「情報共有の大前提」

奄美大島で飛来・発生が確認された果実や果菜類の害虫・ミカンコミバエは、加計呂麻・請・与路島を含む全島域にかかっていた緊急防除が先月14日に解除された。ただし台湾やフィリピンなど南西諸島周辺発生国から、風に起因する「飛び込み」には常に警戒しなければならない。こうした侵入リスクに対し果樹農家からは平時も誘殺情報の公開の徹底を求める声が強く、農林水産省は緊急防除時より頻度は落ちるものの、平時の情報公開に理解を示している。

ミカンコミバエの誘殺情報は同省植物防疫所のホームページで公開している。2015年9月以降の情報で先月25日現在(週まとめ)が最新。奄美大島は緊急防除解除以降も誘殺は確認されていないが、沖縄県の場合、7月19~25日の週に22匹の誘殺を確認。市町村ごとにみると、石垣市が最も多く15匹、これに次ぐのが八重山郡・竹富町4匹、宮古郡・多良間村2匹、八重山郡・与那国町1匹。台湾に近い先島諸島に集中しており、いずれも連続ではなく散発的な誘殺のため、「飛び込み」とみられている。

この誘殺情報について同省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は「厳戒態勢時は週に1回更新し、1週間の誘殺の有無を水曜日に公表してきた。奄美大島の緊急防除が解除された中、平時においては頻度を下げ、月に2回の調査を同時に公表(市町村ごと)していく」と説明する。新たな誘殺が確認された場合は、その地域の調査の頻度を上げ、調査に応じて結果を公表していくという。

島田課長は「昨年11月に奄美市で行った地元説明会では、生産農家のみなさんなどから情報の共有の面で(初動時は)適切ではなかったという指摘を受けた。誘殺情報の公表は解除後の平時においても対応し、情報の共有に力を入れたい」としている。情報共有については緊急防除省令廃止後に奄美大島入りし地元関係者との意見交換のほか、果樹園視察を行った森山裕農水相も理解を示しており、「できるだけスピーディーに情報(誘殺情報)を伝えることは重要なこと。トラップを増設し、どこかで異常があればお互い(行政と農家など)が情報を共有して、より関心を高めて対応していくことが大事」と発言している。

奄美大島での誘殺は昨年12月22日以降現在も確認されていないが、これから秋口にかけてグアバなど熟した果実にミカンコミバエが飛来し、メスが卵を産み付け、世代交代により発生を招く可能性がある。タンカンなどを生産する農家からは「三度目のミカンコミバエ発生がないよう、平時の侵入警戒体制が重要。『飛び込み』による侵入が確認された場合は初動対応の不十分さを繰り返さないためにも、迅速に防除対策を進めなければならない。それには地域への誘殺情報の公開が大前提だけに、きめ細かな情報伝達に力を入れてほしい」との要望がある。

なお、国が打ち出した緊急防除解除後の防除方針では、地域住民と連携した平時からの対応も。この中では①ミカンコミバエの寄主植物を把握し事前に除去するため、▽各市町村が寄主植物の植栽地図を作成▽県が電子データとして取りまとめ②植物防疫所が作成した採果カレンダー等を市町村を通じ地元住民へ提供③国、県、市町村は平時から緊密に連携、誘殺にかかわる情報等速やかに地元住民に提供―を挙げている。