サンゴの島でシンポジウム

喜界町役場コミュニティホールであった「喜界島サンゴ礁科学シンポジウム」

喜界島の気候変動解析「東アジア全域知ることに」
最新の研究成果など報告

喜界島サンゴ礁科学シンポジウム(喜界島サンゴ礁科学研究所主催)が4日と5日の2日間、喜界町の役場コミュニティーホールであった。サンゴ礁や海洋研究に取り組む研究者らが一堂に会し、サンゴ礁の科学的側面の解説や最新の研究成果を発表。総合討論会には地域住民の来場もあり、今後の活動や研究内容について、積極的に意見を交わす姿が見られた。

同シンポジウムは同研究所に参画する研究者による講演会。各研究者らは、1日から行われていた「サンゴ礁サイエンスキャンプ」に講師として参加しており、シンポジウム初日にはキャンプに参加した子どもたちによる研究発表も。2日目はより専門的な部分で喜界島のサンゴ礁の価値や、同島や奄美大島などで現在行われている研究について、10人の研究者が登壇した。

昨年まで同研究所に在籍していた梶田展人さん(東京大学修士課程1年)は、「喜界島サンゴが解き明かす気候変動」をテーマに、喜界島での研究成果を披露。「過去の気候変動を再現することは、将来の気候変動を知るうえで重要になる。また、喜界島は黒潮とアジアモンスーン(季節風)の影響を受けているので、喜界島の気候変動を解析することで、東アジア全域を支配する気候システムの変動を知ることができる」と語った。

また、同研究所の山崎敦子所長(北海道大学)も先日発表した「造礁サンゴ骨格の窒素同位体比から復元された過去150年間の黒潮流量の変動」について解説。そのほかの参加者も、科学や環境、生物など様々な側面から研究してきたサンゴについて発表。同キャンプに参加した杉俣駿君(早町小3年)も前日に続き、ポスター発表に挑戦する場面が見られた。

総合討論では、参加者が円になり、キャンプの在り方や今後のシンポジウムについて意見交換。地元住民からは「サンゴの話や海藻の話など、ぜひダイビング業者にも情報をもらえたら観光に生かせるのでは」「キャンプは子ども以上に大人が興味を持ちそう。大人向けにも開催してほしい」などの意見も。

また、同研究所が子どもへの教育活動の一環として実施しているビーチクリーンについても様々な意見があり、ハワイで行っている事例として「外来種を駆除した際、大半は堆肥とするが、ほんの一部だけは押し花のようにして子どもたちに持ち帰らせている。『この植物はハワイにはないもの』と、手元において覚えてもらえるようにするのが目的」などと紹介した。

同研究所の渡邊剛理事長(北海道大学講師)は「この研究所は世界に発信できる一大研究拠点を築くことが目的。まだ始まったばかりだが、そのための人が集まるきっかけがサマーキャンプ。一大イベントとして今後も続けていきたい」と語った。