山の日制定「森の魅力アピールすることに」

観光客に人気のスポット・金作原原生林。豊かな自然に触れることができる

湯湾岳、手軽な散策コース 国内で人気上昇、ロングトレイル
地域の自然楽しむ

 2010年、新語・流行語大賞候補に選ばれた「山ガール」は登山人気を象徴する言葉にもなった。近年、山の楽しみ方が広がりを見せている。ひたすら頂上を目指し、最高地点に着いた時の達成感は登山の醍醐味と言えるだろう。一方、高い山にこだわらず、あくまで登頂は一つの通過点として、登山道や林道などを長距離に渡って歩きながら、自然や文化を楽しむのが「ロングトレイル」だ。発祥地の欧米では文化として定着しているが、日本でも、じわじわと愛好者が増えている。

 昨年の秋、関係団体はさらなる普及を目標に「NPO法人日本ロングトレイル協会」を設立した。コース整備も進められており、計画中のものも含め、現在18の加盟トレイルを紹介している。

 米国には全長5千㌔を超えるトレイルもあるが、一般的には数十㌔から数百㌔と言われ、国内のものは最短で全長38㌔。最長は、長野県と山梨県にまたがる、八ヶ岳連峰の山麓を周回する約200㌔のトレイルで、両県合わせた12市町村を経由する。自然散策路や歴史街道などもつなぎ、豊かな自然と歴史・文化に触れることができる。

 これと直接的な関係はないが、現在奄美群島においては、「琉球・奄美」自然遺産登録を念頭に、群島内の自然や集落を歩く「奄美世界自然遺産トレイル(仮称)」を県が中心となり、各地域と連携しながら進めている。今年度、奄美大島を含む3島4町のコース選定に着手。17年度以降は、決まったコースからの順次開通を目指すとしている。

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 奄美大島は、国内でも最大規模の亜熱帯照葉樹林を有する。なかでも金作原原生林は、市街地からも近く、観光客にも人気のスポットだ。また、奄美最高峰の湯湾岳にも林齢の高い照葉樹林がまとまって残っている。手軽に短いトレイルウォークができ、豊かな自然を堪能することができる。国内で人気の山に登ったり、世界的にも有名なロングトレイルコースも歩いた経験を持つ、NPO法人奄美野鳥の会・鳥飼久裕会長(56)に、山歩きなどトレイルの魅力について聞いてみた。

山の日制定について「奄美について言うならば、奄美の『海』は対外的なイメージとして分かりやすいと思うがそれだけでなく、奄美の森にも魅力があることをアピールする上では意味があると思う」
トレイルの魅力は? 「(人によってとらえ方が違うだろう)基本的には、小道みたいなイメージだと思うが、それほど整っていない歩道をゆっくり歩いて、自分で小さな発見を積み重ねていく中で、そこの自然に近づけること。個人的には、舗装された広い道より、人が数人並べるくらいの幅の道を好んでいる」

原生林の中を歩く魅力など
「湯湾岳の登山道は分かりやすいトレイルだと思う。個人差があるが片道、約1時間で頂上まで行くことができ、その間に奄美固有の自然が観察できる。また、知識があればさらに新しいものが見えてくる。個人的には一番トレイルっぽい場所だと感じている」

そのほか楽しみ方など「鳥や昆虫など生物も面白い。森の中で今の時期(夏)は、鳥はあまり動かない時期だが、(苦手な人もいるだろうが)昆虫はいったん目を向けると、奄美には固有種も多くおり、バリエーション豊かで、きれいな虫もいる」

自然保護を前提に、来島者(観光客)がトレイルウォークを楽しむ際の注意点など
「多くの人が森を体験してもうらことは良いことだと思うが、外来種の問題が出てくる。悪意的な持ち込みはまれで、大半は無自覚で持ち込んでしまっている。例えば、『外来種を持ち込むリスク』を周知すること。また、入る前に靴の泥を落としたり、十分に気を配る必要がある。(小笠原でも一生懸命やっていることだが)奄美が外来種に対し、意識していることを感じてもらうことが大切。小笠原に見習う点が多くある」