与論の歴史育んだ踊りと酒に酔う

田中一村の画集で飾られた、試写会&試飲会の会場(中川美帆さん提供)

上映会のために調合された有村酒造の黒糖焼酎(中川美帆さん提供)

東京で「与論の十五夜踊り」鑑賞会と与論焼酎試飲会

【東京】与論島の焼酎と民俗文化を堪能――。 27日、東京・馬喰町の「ギャラリーアムコ」(中央区日本橋馬喰町2―3―3)で、民俗映画「与論の十五夜踊り」の鑑賞会と与論産黒糖焼酎の試飲会が行われ、参加者は与論の歴史が育んだ踊りと酒に酔いしれた。

同映画は、与論町教育委員会が企画、民族文化映像研究所が1982年に制作した。標高90㍍の所にあるグスクと呼ばれる城跡で行われる、「十五夜踊り」。二つの組に分かれた男性たちが、「アーミタボーリ」と言いながら雨乞いをするさまや、紺の衣装に頭巾で扇子を持って優雅に踊る姿や、白装束に仮面をつけて狂言を披露する様子を伝えるドキュメンタリー。奉納相撲や子どもたちが家々を回って、十五夜ダンゴを取ってまわるなど、与論の民俗文化を美しい満月の下で満喫する、35年前の島民たちの姿が30分にわたって描かれている。島民の満足げな表情が印象的だ。

祭りの準備から、十五夜踊りの場で催される宴の場面など、古来、酒は祭事には欠かせなかった。そうした背景に沿うように、この日、与論島で唯一の酒蔵「有村酒造」から奄美黒糖焼酎「島有泉」が用意された。上映会の後は、NPO法人離島経済新聞社で編集や記事制作に携わる傍ら、焼酎ライターとして焼酎・泡盛業界の業界紙で活躍する、石原みどりさんを囲み、「人と暮らしとお酒」をテーマに、黒糖焼酎を試飲しながら、スライドを交えたアットホームな討論会に。

石原さんは、奄美で7年間暮らしたのち今の仕事に。9月1日には初の著書『あまみの甘み あまみの香り』(鯨本あつこ・石原みどり著 西日本出版社)が発売予定だ。石原さんは「黒糖焼酎と聞くと甘くカロリーがある印象を受けるが、実は糖質はゼロでローカロリーと体にも優しい」などと説明。また、「与論島には、自己紹介し口上を述べて酒を飲み干し、回し飲みする『与論献奉』と呼ばれる風習があるが、そう呼ばれるようになったのは終戦後で、元は”日本国憲法”から来たと言われている」などの逸話を紹介すると、参加者は感心した表情を浮かべていた。

企画に当たった、郷土映像ラボラトリーの中川美帆さんは、「連綿と受け継がれてきた、与論島の十五夜踊りを、少しでも多くの人に知ってもらいたかった」と意義深げに振り返った。

イベントは、同日2回と翌日は、神奈川・茅ヶ崎市でも開催された。与論町教育委員会の資料によれば「十五夜踊り」は、古くは「大和踊り」とも「里主子美踊り」ともいい、毎年旧暦3月、8月、10月の各15日、琴平神社と地主神社に奉納される。島民慰安、五穀豊穣(雨乞い)などの意味を持つ奉納踊り。踊りは一番組、二番組の二つの踊組合によって、狂言と風流踊が交互に演じられ、前者の勇壮と後者の優雅が対照的。1993年、国の重要無形民俗文化財の指定を受けている。

石原さんによると、これまでは限られた家系のみが「十五夜踊り」を受け継いできたが、最近では後継者不足により、保存会が伝承活動を行っているという。参加者らは、「奄美群島をぜひ訪れてみたい」と、南の島に思いを馳せていた。今年の「与論十五夜踊り」は、地主神社で9月15日に奉納される。