昨年度から奄美大島で地場産木材としてイタジイ=ブナ科=の利活用に向けた取り組みが進められている。同島では以前から松くい虫被害の拡大に伴い、リュウキュウマツ資源の枯渇が危惧され、製材所や工務店、木工業者等への悪影響が懸念されており、関係機関ではリュウキュウマツに代わる奄美産木材としてイタジイに着目。沖縄など先進地研修のほか、今年から大阪の大手木材業者への試験出荷も行われている。
イタジイ(オキナワジイ)は温帯から亜熱帯まで分布。低地~山地まで広く生息する常緑高木で、奄美大島の山々でも数多くみられる。『琉球弧・野山の花』(南方新社刊)では「本亜種は琉球地方に産するスダジイの地理的亜種」と紹介している。
県大島支庁林務水産課によると、イタジイは長材がとれて材質や木目など見ても、木材利用の期待値は高い。半面、乾燥工程での歩留まりの低下が大きいなど課題もあり、地元における、より歩留まりの高い乾燥技術の確立などが求められるという。
イタジイの利活用に向けた取り組みとして、島内の製材所や森林組合、建設業など関係機関で構成する奄美産材活用協議会が昨年9月、鹿児島県の肝付町や沖縄県などで先進地研修を実施。イタジイの乾燥・製材技術への協力とアドバイスを得た。
また今年2月には大阪の大手木材業者の工場を視察。今後のイタジイ取引の商談を行うとともに、同月からイタジイ製材の同社への試験出荷を実施。同課によると、取引先ではトラックの敷板に活用され好評を得ており、今後も引き続き試験出荷が継続される見込みという。
同課の永用幸司林務係長は「イタジイは堅硬であることなどが特徴で、トラックの敷板には非常に適している。他にも建物のフローリングにも向いており、沖縄では体育館など公共施設等の床にもイタジイを活用していた」と説明。「現在はどちらかと言えば期待よりも課題の方が大きいとの思いだが、リュウキュウマツに代わる奄美産木材として、今後もイタジイの利活用に向けた取り組みを進めていきたい」と話した。
今後は取引先からの発注に対する試験出荷の継続、さらに需要拡大につながる試作品のデザインの検討・作成などを計画。「あまみ木工まつり」などでの奄美産広葉樹のPR活動にも努めていく方針。