瀬戸内町油井 伝統の豊年踊り

異形の姿の「シシ」が鎌で綱を切る「綱おろし」を披露した豊年踊り

役者やシシがユーモラスに踊る
稲作の作業課程芸能に

旧暦の8月15日、「十五夜の日」にあたる15日、瀬戸内町油井集落(内田百一区長、31世帯58人)の敬老・豊年祭が同集落公民館で開かれ、県の無形民俗文化財に指定される「油井の豊年踊り」が奉納された。平日にもかかわらず、町内外から多くの見物客が詰めかけた。

豊年踊りはその年の稲作を終え、豊作を神に祈る同集落の伝統行事。ワラで出来た綱引きから始まり、土俵祓い、力めし、打ち上げ―など稲作の作業過程を芸能化した12演目は100年以上の歴史を持ち、同町を代表する民俗芸能の一つとなっている。

祭りの幕を開ける「綱切り」は、微笑んだ表情の仮面(紙面)を着けた役者、荒ぶる異形の「シシ」が登場し、独特でユーモラスな動きに来場者は注目。東西に分かれたまわし姿の男衆による綱引きの合間で、現れた「シシ」が鎌で綱を3度切断すると観客から大きな歓声が上がった。

切られた綱は土俵の俵として使われ、力士の土俵入り(振り出し)に。その後は、稲刈り、稲摺り、米つきと一連の作業風景を表現。また女性を襲うシシ退治の「玉露カナ」、「ガットどん」など無言劇・寸劇が披露され、演者の滑稽な様子に場内から笑い声があふれ、最後は八月踊りで祭りを締めくくった。

敬老対象者29人を前に、内田区長は「地域の青壮年団、婦人会が準備を重ね、今年も祭りを開催することができた。地域の伝統文化を今後も継承することが大切」と語った。