18年6月に完成を見込んでいる奄美空港ターミナルビル完成予想図(提供写真)
奄美群島振興交付金による航空運賃の低廉化やLCC就航などにより、近年奄美空港では利用客が増加傾向にある。奄美空港ターミナルビル㈱(三角隆雄社長)では、最速で2018年夏を目指している「奄美・琉球」の世界自然遺産登録後の観光客増加を見据え、同空港ターミナルビルの増改築工事を進めている。落成時期は18年6月を予定。延べ床面積は従来より1・7倍へ拡充し、利用客の利便性向上が期待できそうだ。
同空港は1988年に現在地に移転。96年度の約67万人をピークに、乗降客は年々減少。2010年度には約52万1千人まで落ち込んだものの、11年3月の福岡便開設、14年7月の成田便開設を契機に回復傾向となり、15年度には開港以来過去最多となる約67万8千人が利用。今年度も8月末時点で前年度を8千人上回る状況となっている。
乗降客数増加によりターミナルビル内が手狭になるなど問題があったことから、増改築工事では延べ床面積は現在の4443平方㍍から、7545平方㍍へ拡張する。サービス機能の強化として、搭乗待合室や出発ロビーなどの利用空間の拡充、到着手荷物受け渡しのベルトコンベア、乗客ボーディングブリッジの増設、各階への多目的トイレの設置などを予定する。
セキュリティ機能の強化では、乗降客の混在を解消するための固定橋専用通路の確保、到着客の逆流を防止するためのフラッパーゲートを新設する。また、1階到着ロビー付近には奄美振興交付金を活用し、観光インフォメーションコーナーや奄美の特産品や文化を紹介するイベントスペースを新設する。
このほか、既存トイレの全面改修、電気設備のLED化を実施。車いす利用に対応した全階層利用可能なエレベーターも新設する。
屋久島が世界自然遺産登録後に、観光客が約1・5倍増となったことや、航空会社へのヒアリングやアンケート結果などを基に、増改築計画では30年度に年間91万2千人の旅客数を見込む。乗客300席の中型ジェット機のほか、国際線チャーター便就航時の税関、出入国管理、検疫(CIQ)検査に対応可能なスペースを確保する。総事業費は28億円。うち12億3千万円は同社、残る15億7千万円は国や県、地元自治体が負担する。
同空港では23日、工事の安全祈願祭があり、工事関係者や地元首長などが出席。神事を行い、工期中の安全を祈願した。三角社長は「工事期間中も空港を運用しながら工事を行うことになる。奄美空港が住民や乗降客の皆さんから末永く愛される空港になるよう整備を進めたい」と話した。