外国人旅行者に対し、有償で案内できる特例案内士の育成講座が始まった
奄美群島広域事務組合は1日、奄美市名瀬の奄美会館で奄美群島特例通訳案内士(以下、特例案内士)育成研修の開講式を開いた。奄美群島は「奄美・琉球」の世界自然遺産登録やLCC就航など、外国人観光客が増加する可能性を秘めるなか、研修は初の試み。今後奄美大島を皮切りに、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島でも順次研修をスタートし、外国人観光客を有償でガイドする地域限定の特例案内士育成を目指す。
通訳案内士は通訳案内士法に基づく国家資格で、語学力や歴史、地理などの知識が必要とされる。同法では資格者以外が報酬を得て外国人を案内してはならないと定めているが、2015年度通訳案内士試験の合格率は19・3%で、鹿児島県に居住者する合格者は3人。また群島内の有資格者は数人にとどまるなど、外国人観光客へ有償ガイドを行うには高い壁があった。
これに対し、改正奄振法で創設された「奄美群島特例通訳案内士制度」は、一定の研修を修了して特例案内士に登録された人が、外国人観光客へ有償ガイドができるようになる制度。外国人観光客の受け入れを担う通訳ガイド不足、多様な観光ニーズや需要増への対応といった課題を解消し、再訪意欲の向上などの事業効果が見込まれている。
奄美大島会場の32人を始め、群島全体では今年度58人が受講。今年度は英語コースのみを実施する。同会場の開講式では講師らのあいさつのほか、受講生を代表して塩見裕弘さん(77)、紘子さん(75)夫妻が「これから勉強して免許を取り、外国人観光客の対応ができるようにしたい」と意欲を述べた。
研修は12月にかけ、語学、地元学、総合的ガイドスキルの習得など計54時間行う。研修後、各人による救命講習受講や口述試験合格を経て、群島全域で活動できる特例案内士の資格が取得できる。事業実施主体の広域は同法の期限となる18年度末までに、群島全体で60人の育成を目標に掲げている。