台風後の降雨望む声

順調に生育している16年産のサトウキビ。関係者は台風18号による被害を懸念している(参考写真)

サトウキビ生育 進路近い南部で被害懸念も

9月のまとまった降雨や台風被害の少なさなどから、順調に生育している奄美群島の2016年産サトウキビ。豊作傾向もみられるなか、台風18号が奄美地方に接近に伴い、今年初めて同地方を暴風域に巻き込む恐れがある。特に台風の進路に近い南3島では、強風に伴う塩害や倒伏・折損などによる品質低下を危惧。塩害を防ぐため、風とともに一定の降雨を望む声も聞かれる。

群島糖業振興会によると、今期産の島別の収穫見込み(7月1日現在)は、奄美大島2万7054㌧、喜界島8万1910㌧、徳之島17万2276㌧、沖永良部島7万8236㌧、与論島2万2022㌧の計38万1498㌧。近年の不作から回復傾向にあった15年産キビ生産実績は奄美大島2万1771㌧、喜界島7万4960㌧、徳之島16万9195㌧、沖永良部島8万6484㌧、与論島2万6706㌧の計37万9117㌧で、全体では昨年並みが見込まれている。

台風の進路に最も近い与論島では茎伸長も好調で、豊作だった15年産に続き豊作が見込まれている。与論島糖業㈱の担当者は「ここまで順調だったが、10月に台風被害にあうと回復に時間がかかるため心配。強風による倒伏や折損なども懸念される」と話した。

15年産実績が前期比約29%増と豊作だった沖永良部島。今年も三作型(春植え、夏植え、株出し)のいずれでも平年値を上回るなど順調に生育していたが、先月の台風16号の影響で、一部の地域で潮風害も発生していた。南栄糖業㈱の担当者は「全島で潮風害があれば、登熟に大きな影響が出る。台風本体の西側で雨が降っているようだが、接近・通過時には奄美群島にも雨が降ってほしい」と切望した。

徳之島ではこれまで雨に恵まれ、台風被害もなかったことから、茎長は平年比約20%増、茎数も平年並みと豊作型で推移している。南西糖業㈱の担当者は「台風の中心付近が通過すると、急に風向きが変わり折損する危険性もあった」と数日前の予報と比べ、西側を進んでいる台風の進路に安ど。一方で、海岸線付近のほ場での塩害発生を懸念し、設備が整っている地域におけるかん水を推奨している。

梅雨明け後の少雨で、当初生育の遅れがみられた奄美大島でも、9月の降雨により平年と比べ順調に生育している。富国製糖㈱の担当者は「台風は勢力が強いが離れているため、想定よりは風も弱く、波は低い。現状、塩害の心配はしていないが、台風通過後の被害調査の結果を見守りたい」と述べた。

喜界島も奄美大島同様、生育が遅れていたが、夏植え、春植えは平年並みまで回復。生和糖業㈱の担当者は「暴風域に入る可能性も低くなりホッとしているが、台風16号で夏植えの倒伏がみられたほ場もある」と気を引き締め、9月の中旬以降まとまった降雨がないことから、「今回の台風も慈雨をもたらしてくれれば」と期待を寄せた。