年内出し新柑橘

出荷に向けて初めての収穫期を迎える「津之輝」

生産安定へ防風対策に力を入れている元井さん

お歳暮需要狙いPRへ
ネーミング決め パッケージデザイン発注
栽培では防風対策ポイント

露地栽培で年内出荷が可能な柑橘=かんきつ=の新品種として奄美大島に導入された「津之輝=つのかがやき=」は、今年から出荷できる見通しだ。国直轄の地域コンソーシアム支援事業を活用し生産から販売対策までの取り組みが進められており、今年度は販売面では奄美産が伝わるネーミングを決め、パッケージデザイン検討後にお歳暮需要を狙ったPR活動に乗り出す。出荷が実現することで販売戦略に弾みがつきそう。

農林水産省によると、同事業は実需者、生産者、行政等が一体となったコンソーシアムが、新品種・新技術等の確立・普及、知財活用にいたる総合的な産地化の取り組みにかかわる検討会等の費用を支援するもの。奄美大島の津之輝を対象にした事業は2014年度からスタート(5年計画)。ところが15年度はミカンコミバエ問題で実施できず、15年度に計画していた事業が16年度に繰り越された。

県大島支庁農政普及課によると、16年度事業は▽産地づくり推進体制の整備▽生産安定・商品性向上技術の確立▽お歳暮需要を狙ったPR対策▽産地ブランドの保護に向けた取り組み―を計画している。津之輝の産地形成にあたっては奄美市など苗木助成を行っている自治体もあり、普及が図られている。導入している農家の栽培により今年から出荷が始まる見通しで、当初は16年度からJA共販での取り扱いを目指していたが、準備が整わず、個人販売でスタートすることになった。

販売にあたり近く独自のネーミング(シマグチの取り入れなど奄美らしさが伝わるものを検討)を決定。これを受けてパッケージデザインを検討し発注、12月に予定しているPR活動に間に合わせる。奄美産をアピールするパッケージデザインが施された津之輝を準備、こだわりの販売店等で活動(東京と新潟で)していくが、消費者の反応を把握するため聞き取り調査も予定している。

こうした販売活動にあたり生産安定・商品性向上が欠かせない。同課技術普及係は「津之輝の生育は旺盛だが、タンカンに比べるとかいよう病に弱い。また、奄美大島の北部と南部、下場と上場など栽培している場所によって生育に差がある」と指摘する。

奄美市住用町の果樹農家、元井孝信さんの津之輝栽培は順調だ。国道沿いの下場で取り組んでおり、5年目の今年は果実の初成りを迎えるという。栽培面積は30㌃(約230本)で約300㌔の収穫を見込む。元井さんは「着果状態はいい。収穫に向けて10月から品質調査に入るが、酸切れの状態などをみて12月中旬にも収穫できるのではないか。年末の需要期に間に合わせたい」と語る。

栽培の課題の一つである、かいよう病対策については「発病枝の除去のほか、風によって被害が広がることから防風対策が重要。きちんと防風対策を施した上で栽培に取り組まないと生産は安定しない」と元井さん。津之輝を取り囲むように防風垣が整備されているが、元井さんは推奨樹種のアデクを取り入れている。

メモ
津之輝 「清見・興津早生」と「アンコール」を交雑したもので、(独)農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所(長崎県島原市)が育成機関。2009年3月に品種登録された。果実は皮が薄いためむきやすく、じょうのう(ミカンの房のふくろ部分)が多いためジューシーで、濃厚な甘酸っぱさが特徴となっている。