「島バナナ」豊作 入荷多量

台風被害のない今年は多くの量の「島バナナ」が地元市場に持ち込まれている

地元市場 今年度上半期で前年の倍
値段下がり求めやすく

奄美では「島バナナ」と呼ばれている在来のバナナが今年は豊作で、地元市場への入荷量は今年度上半期で既に前年一年間の倍以上となっている。例年、台風接近で島バナナは被害を受けるが、今年は現在のところ「被害がなく大豊作」。量が多いため値段が下がり消費者が買い求めやすい市況が続いている。

奄美のほか沖縄でも栽培されている島バナナは、小笠原諸島からの移入(小笠原品種)とされている。輸入バナナに比べ半分ほどのサイズと小ぶりだが、熟すと濃厚な甘さに程よい酸味と香りがあり、「バナナ好きにはたまらない」味だ。

この美味しさ以外にも島バナナには魅力がある。通常、店頭に並ぶバナナは黄色に熟したものだが、島バナナは色が青い状態で出荷され、そのまま販売される。青果店などが勧めるのが、購入した青い島バナナをそのまま部屋でつるす方法。1週間ほどで黄色く熟しすぐに食べ頃になることから、熟すまで待つ栽培感覚を室内で楽しめる。

島バナナの旬の時期は例年9~10月。この時期は台風シーズンと重なる。島バナナの樹は繊維質のため強風が吹くとなぎ倒され、風速15~20㍍ほどの風でも簡単に倒れてしまうとされている。台風の接近に伴う暴風雨で被害に遭いやすいため、島バナナ栽培は安定しないのが難点となっている。

ところが今年は栽培が安定、生産量が多い。地元市場・名瀬中央青果㈱(福山治社長)の入荷量を月別にみると、6月970㌔(前年63㌔)、7月1600㌔(同190㌔)、8月3300㌔(同570㌔)、9月5700㌔(同1200㌔)。島バナナの入荷のピークは9月だが、10月に入っても入荷量は多く、市場の休日明けだった6日の日量は330㌔に及んだ。昨年一年間の入荷量は約6100㌔(売上額約550万円)だが、今年は年度の上半期(4~9月計)だけで約1万2千㌔(同約680万円)と既に倍も出回っている。

「島バナナの市場への持ち込みは名瀬地区の生産者が多いが、徳之島からも問い合わせがある。今年は大豊作だけに、初めての持ち込みもかなりある」(同青果商事係主任・元田佑一さん)。

量が多いと当然値段は下がる。昨年上半期の平均単価はキロ当たり1278円。輸入バナナ(200円台)に比べると高級品だ。今年の上半期の平均単価は同541円で、昨年の半値以下。元田さんは「現在の値段なら消費者のみなさんも買い求めやすいのではないか。ぜひ、多くの方が地元で栽培されている島バナナの美味しさを味わってほしい」と語る。

市場で購入している青果店の中には島外への販売に力点を置いているところもある。インターネットの活用のほか、観光客向けのお土産用などとして。七段ほど重なったものを一房(7~8㌔程度)で販売しているが、珍しさから根強い人気があるという。