松くい虫被害 笠利町で拡大

松くい虫被害が拡大する奄美市笠利町。松が赤茶色に染まっている

徳之島町、伊仙町も増加傾向
伐倒駆除など対策

県大島支庁林務水産課はこのほど、松くい虫被害発生状況(9月末現在)をまとめた。それによると、奄美全体の被害容量は前年同時期比17・8%減の3万4703立方㍍。近年被害が急増していた龍郷町の容量が減少した一方、奄美市笠利町ではほぼ倍増するなど被害が拡大した。徳之島でも徳之島町、伊仙町では増加傾向にあり、これまで発生していなかった地域に被害が拡大している。

松枯れは体長約1㌢程度の線虫・マツノザイセンチュウがマツの木体内に侵入して引き起こす現象で、この線虫をマツノマダラカミキリが運びことで被害が拡大する。感染した松は樹勢が衰え、葉が赤茶色に変色してやがて枯れる。

奄美では1990年代に瀬戸内町加計呂麻島で松枯れが確認された。以降、同島と同町を中心に被害容量が増え、徐々に近隣自治体へ飛び火。2013年度末には群島全域で7万6300立方㍍まで拡大した。奄美大島では近年、被害の中心が北部に移りつつあり、10年以降は徳之島や沖永良部島でも被害が確認されるようになった。

同課によると、被害容量が最も多いのは同市笠利町の2万1338立方㍍(前年同時期比89・8%増)。次いで同市名瀬4194立方㍍(同48・2%減)、前年同時期で最も被害が多かった龍郷町は3237立方㍍(同81・4%減)で、3地区合計では奄美大島全体の約99%を占める。一方、先行して松枯れが確認されていた瀬戸内町や宇検村などでは、枯死した松の増加による資源減で被害容量は減少。特に同町では2年前と比べ99・6%減少した。

徳之島では最初に被害が確認された天城町が、前年同時期比35・8%減の1759立方㍍と減少傾向に。徳之島町は同147・8%増の3152立方㍍、伊仙町も同312・2%増の338立方㍍と増加した。沖永良部島では知名町が同96・5%減の9立方㍍と大幅に減少したが、和泊町は同3・7%増の390立方㍍と微増した。

奄美での松くい虫対策は枯れた松を伐採してビニールに包み、燻蒸=くんじょう=する伐倒駆除が主流。奄美では希少野生動植物が数多く生息することから、本土で行われた対策に効果的な薬剤の空中散布は実施されていない。

県や市町村は15年度、事業費約2億400万円で伐倒駆除4708立方㍍、枯損木対策1976立方㍍、薬剤樹幹注入319本、樹種転換366立方㍍などを実施した。今年度も伐倒駆除や枯損木対策、感染源除去などを中心に対策にあたるという。

同課の担当者は「感染力の強い病害虫で、完全に防除するのは難しい。伐倒駆除で被害拡大を抑制する一方、人命にかかわる枯損木や残したい松への樹幹注入など個別の対応を検討しながら、できるだけ災害が発生しないように対応していきたい」としている。