山口から約650㌔の移動

龍郷町長雲峠で再捕獲されたアサギマダラ。「RPT」「TAF」のマークにより山口県からの移動とわかった

喜界・奄美大島で再捕獲相次ぐ
アサギマダラ「秋の渡り」

日本列島を長距離移動するチョウ・アサギマダラの「秋の渡り」は、11月に入り奄美への飛来が増え始めた。本州の西の端である山口県でマーキング(標識)されたものが喜界島と奄美大島で相次いで再捕獲され、約650㌔の移動を示している。

両島で再捕獲されたアサギマダラの翅=はね=には、いずれも「RPT」と「TAF」のマークが記されてあった。RPTは同県下関市にあるリフレッシュパーク豊浦(植物や昆虫エリアなどが設けられている公園)、TAFはマーキングした福村拓己さん(68)の頭文字。

リフレッシュパーク豊浦のホームページによると、同園にはアサギマダラの好むフジバカマ(吸蜜植物)が植えてあり、毎年10月には数千頭が飛来するという。飛来情報をみると、同園で10月15日に標識(マーキング日)されたものが11月2日に喜界島(上嘉鉄)で、10月20日標識が11月2日に奄美大島(龍郷町の長雲峠)、10月7日標識が11月6日に奄美大島(同)でそれぞれ再捕獲された。

マーキングした福村さんは同園のボランティア。公園内へのフジバカマの植え付けに取り組み、輪作がきかないため毎年、5千~6千株も植え付けているという。福村さんは手入れや病気対策にも携わり、開花させることでアサギマダラの飛来環境を保っている。「コスモスの後にフジバカマが開花し、それによってアサギマダラが飛来する。観察を楽しみに毎年多くの人が来園する」(福村さん)。

「秋の渡り」では、喜界や奄美大島では自生種のヤマヒヨドリバナやヌマダイコンのほか、外来種のシロノセンダングサ、冬場はツワブキの花などに飛来する。これに対し福村さんらは園芸用のフジバカマを庭や花壇などに植えてマーキングのためのアサギマダラが飛来する環境を作りだしており、福村さんは「野生の草花に飛来する奄美の環境がうらやましい」と語った。

山口県の西部方面を中心に、福村さんがアサギマダラの移動を調べるマーキングを始めたのは2009年から。春、夏、秋と例年年間で約7千頭にマーキングしているが、今年は約4400頭にとどまっている。長野県や福島県などから飛来する「秋の渡り」では例年2千頭にマーキングしているのに対し、今年は1千頭余りにとどまった。福村さんは「今年は個体数が減っている。また動きが遅く、南下の遅れがみられた。現在の気温は14~15度で、11月に入ってからの飛来数は一日当たり一桁台にとどまっている。これからは南下により喜界や奄美大島、沖縄、先島諸島、台湾など南西諸島への飛来数が増えてくる。南西諸島でもぜひ多くの人がマーキングに取り組み、移動情報を寄せてほしい」と語る。

なお、最新の11月6日に再捕獲されたものは、10月7日に福村さんが109頭にマーキングしたうちの1頭という。1カ月かけての山口から奄美大島への移動になる。