シルク・サミット2016

講演や研究活動報告で、シルクの可能性を発信したシルク・サミット

シルクの可能性発信
新蚕業創出へ情報共有 講演、研究活動報告

シルク・サミット2016in奄美(農業・食品産業技術総合研究機構、同実行委員会など主催)が10日、奄美市名瀬の集宴会施設であった。シルク(絹)を使用した医療用品、化粧品に関する講演のほか大島紬、養蚕などの研究活動報告で、シルクの各分野における可能性を発信し、新蚕業の創出に向け情報を共有した。

同サミットは蚕糸技術やシルク文化を継承・発展させるだけでなく、新たなシルク文化を創造するため、関係者が意見交換や情報、技術交流を行うため、2001年に初開催。これまで全国各地で開かれ、今回は18回目。県内初開催となる奄美会場には約170人が参加した。

基調講演では県立大島病院皮膚科の馬場淳徳部長が、「創傷被覆材としてのシルクの効果」と題して講演。蚕から抽出したシルクフィブロインは様々な形状に加工できることから、「用途に応じた被覆材を製造できる可能性がある」と持論を展開した。

㈱アーダンの西博顯=ひろひと=代表取締役は、シルクを用いた化粧品開発と商品化に加え、国産絹糸確保に向けた桑園拡充などの取り組みを紹介。15年からは海外展開も行っており、「シルクが持つかブランド力は、海外に出ても何らかの結果を得られると確信がある」と強調した。

研究活動報告では、大島紬や養蚕に取り組む事業者など5団体が発表した。同市名瀬の㈲はじめ商事の元允謙=ただあき=専務取締役は、減産が続く大島紬について、「市場とのミスマッチがある」と指摘。大島紬製造の技術を活用できる商品づくりとして、大島紬の古い着物を活用した同社が商品化している「奄美布」を紹介し、「大島紬は製造できる設備や技術、職人、材料こそが根幹。大島紬を作り続けられる環境づくりとともに、それを支える新たな伝統づくりを行うことが重要」と訴えた。

㈱奄美養蚕の恵俊也さんは、5年前から奄美大島で取り組んでいる養蚕復活に向けた取り組みを報告。良質な桑の収穫のための台風対策や土壌管理、遊休地の活用による桑木の確保、栽培法などを紹介し、「自分たちが取り組むことで、奄美での養蚕復活の原動力になれば」と意欲を示した。また蚕を飼育する奄美市笠利町の赤木名小附属幼稚園の園児らも、「繭から糸を取ることができたときはすごいと思った」などと感想を発表した。

 11日は現地見学会を予定している。