言語・方言サミット奄美大会in与論

消滅危機のある8地域の言語・方言の聞き比べが行われた=与論町=

消滅危機地域の取り組み紹介
大事に思う気持ち「危機度合いに影響」

 【沖永良部】2016年度危機的な状況にある言語・方言サミット奄美大会in与論が13日、与論町の砂美地来館であった。消滅危機のある言語・方言の話者や継承活動に取り組む行政関係者、有識者らが出席。八丈島や奄美群島での方言継承に向けた事例を紹介した国立国語研究所・言語変異研究領域の木部暢子氏は「住んでいる人がどれだけ方言を大事に思い、守っているかで危機の度合いに大きな影響を与えている」と語った。

ユネスコが2009年に発表した消滅危機言語のうち、日本ではアイヌや沖縄、八重山など8言語・方言が「将来消滅の危機にある」と報告された。その中に沖縄本島北部・沖永良部・与論の「国頭語」も含まれている。

サミットは、文化庁、鹿児島県、与論町、同町教育委員会、大学共同利用機関法人人間文化機構国立国語研究所、国立大学法人琉球大学が主催で、八丈島、沖縄に続き3回目。日本で消滅の危機にある言語・方言と、東日本大震災で危機的な状況が危惧される方言の状況改善を目的に開かれた。

オープニングは、創作エイサーグループ「舞弦鼓」のパフォーマンスと、町内こども園による島口・島唄学習発表が飾った。沖縄県内各方言の使用状況や行政側の言語政策を説明した琉球大学法文学部の石原昌英氏は「聞けるが、話せない世代をどのように話者にしていくかが課題」「学校教育を通した保存継承を望んでいるが、実際の活動には結びついていない」と話した。

消滅危機のある地域を訪れ危機の度合いを調査した木部氏は「与論は他の地域に比べ保存伝承の状況が良く、父親と母親の世代が使っていることは貴重」と評価。学校・社会教育での方言継承活動の注意点として▽教員の異動と方言の授業の継続性▽地元出身教員でなくても授業が担当できる体制の整備▽参加者の固定化―などを挙げ「民謡を使って方言学習の入口にするのはとても良いこと。そこから新しい会話を作ることに発展させてほしい」と述べた。

事例紹介では、沖縄県豊見城市が地域独自の方言読本を制作した過程や、与論町での方言を使ったカルタ大会などが報告され、16年前から方言の保存活動を行っている与論民俗村の菊秀史氏は「言葉は社会全体で取り組まないと残せない。方言を話せる人が、自分の子どもや地域の子ども達に方言のシャワーを浴びせることが大事」と語った。

また、8地域の言語・方言の話者が登壇し「手のひらを太陽に」の歌詞をもとに言葉の聞き比べが行われたほか、与論とアイヌの伝承の方言語りや、与論小学校の方言劇の様子を映したDVDが披露された。

「吾きゃシマぬウタ 吾きゃシマぬユムタ(私のシマの唄、私のシマの言葉)」をテーマに講演した奄美島唄の唄者、朝崎郁恵氏は「奄美の先人は各時代の生活と方言を歌にして残してくれた」と話し、「はまさき」「千鳥浜」などの島唄を歌い上げた。

最後に大会宣言が行われ、与論中学校3年の川崎佳都さんと同中2年の池田匡佑さんは「与論の宝であるユンヌフトゥバを学校の授業だけでなく、家の中や地域においても、いつでも聞かせてほしい」。与論民俗村の菊千代さんは方言で「言葉は文化の基盤。共通語も方言も使う生活をしよう」と呼び掛けた。