年内出し新柑橘・津之輝

ミカンコミバエ緊急防除の解除により可能になった島外出荷に向けて仕分け作業をする元井さん

津之輝出荷
専用の化粧箱に箱詰めされた津之輝。外観・品質ともタンカンに近い特徴がある

お歳暮需要に手応え
奄美市住用・元井農園 関東方面に出荷へ

 露地栽培で年内出荷が可能な柑橘=かんきつ=の新品種として奄美大島に導入された「津之輝=つのかがやき=」が収穫期に入っている。奄美市住用町の元井農園では導入して5年目の今期、果実の初成りを迎えた。果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの根絶により奄美大島の緊急防除が解除されたことで島外出荷が可能になり、元井農園では関東方面に発送、お歳暮需要の手応えが注文に表れている。

 同農園では国道沿いの下場で津之輝を栽培。栽培面積は30㌃(約230本)で、樹木を取り囲むように防風垣(推奨樹種のアデクを取り入れ)が整備されている。

 元井孝信さんによると、出荷に向けて初収穫を行ったのは今月3日。収穫見込み量の4分の3にあたる約800㌔を収穫、残る量は200㌔程度。糖度が11~11・5度まで上昇し、酸が0・9台と酸切れも進んだため収穫の目安とした。

 「つのかがやき」の表記で、元井農園産と印刷した専用の化粧箱を準備。「ぷりぷり新食感」の文字があり、これを津之輝の特性としてアピールしている。収穫した果実は1週間くらいの予措=よそ=(果皮を乾燥させるための貯蔵方法。それにより果肉から果皮への水分移行が減少し、味が落ち着き糖・酸のバランスが良くなり、味がまろやかになる)を経て発送する。

 2Lから3Lサイズの果実を専用の化粧箱に納め、3㌔12個入り等で宅配販売。箱詰めされた津之輝は、色つき具合や形といった外観はタンカンに似ている。皮が薄いためむきやすく、果汁の多さといった特徴もタンカンと共通している。

 元井さんは「タンカンの取引がある顧客のみなさんに案内したところ、お歳暮用として予想以上の注文がある。価格設定が高めでも購入があるのは、年末の需要期に出荷できる強みではないか」と語る。栽培面に関しては「ポンカン用の肥料の投入など12月収穫を前提にした取り組みが必要。樹勢が強いと大玉化の傾向にあるが、まだ5年目の樹木だけに7~8年で落ち着くのではないか。こちらが求めているLおよび2Lサイズが収穫できるようになると思う」と元井さんは指摘した。

 なお、津之輝の販売は導入農家の栽培により今年から出荷が始まり、JA共販での取り扱いが計画された。しかし準備が整わず持ち越され、生産農家は元井農園のように個人販売で対応している。