「津之輝」栽培管理検討会

津之輝の課題・対策を探るため、大島支場内での栽培状況の視察が行われた

津之輝試食
異なる栽培地で収穫された津之輝の試食もあり、全般的に好評だった

年末贈答用出荷 平場中心に推進へ
施肥時期や病害虫対策も検討

 柑橘=かんきつ=新品種「津之輝=つのかがやき=」の栽培管理検討会が9日、県農業開発総合センター大島支場内で開かれた。現地・室内研修があり、2016年産の栽培状況、栽培上の課題・対策などを検討した結果、高値につながる12月の年末贈答用として出荷するには、収穫後の予措=よそ=期間も必要となることから、着果状況の考察により栽培地は平場(下場)を中心に推進していくことになった。

 県園芸振興協議会カンキツ新品種産地育成プロジェクト班(班長=大島支庁農政普及課・宝正巳課長)の主催。検討会開催は、昨年はミカンコミバエ問題で開催できなかったため、14年以来。生産者と県・市町村・JAなど関係機関(団体)の担当者が参加。栽培上の課題を明らかにし、対策を検討することで奄美大島における津之輝の生産振興に役立てるのが狙い。

 まず大島支場内第3ほ場で行われている津之輝の栽培管理状況を視察。14年4月に植栽され今年初めて着果したもの。管理についての説明で、かいよう病抵抗性はタンカン(垂水1号)と比べると、「やや弱い」と指摘。初着果でみられる、へそ果については「栽培年数を重ねていけば落ち着く傾向にある」との説明があった。

 室内研修では課題を探ったほか、調査・考察の発表も。栽培上の課題では、果実はL~2L階級の出荷を目標にしているものの、今年は肥大がよく大玉化していることから、どのような栽培方法が適しているかが挙がった。また病害(かいよう病)に関しては「中晩柑の中でポンカンがかいよう病に強いが、タンカンよりも津之輝は弱い。果皮の腐敗もみられる」。果実の出荷・調整では、予措(果皮を乾燥させるための貯蔵方法)でじょうのうが軟らかくなり食味が向上することから「収穫後、1週間程度予措が必要」とし、奄美大島における栽培推進は「全域で推進できるかは疑問」とした。

 調査・考察では、奄美地域での津之輝の生かし方として▽施肥体系▽重点的な防除▽摘果▽母枝形成▽根群強化▽商材―の考え方を模索。生産から販売までトータルプランの組み立てが必要とした。

 生産者からは果皮障害である、かいよう性こはん症に関する質問も。大島支庁農政普及課は水分ストレス(土壌水分問題)の影響を挙げた。

 下場や上場で栽培された津之輝の試食を挟み相互検討に。それにより、▽熟期=栽培地の差はあまりない。収穫のタイミングはクエン酸の分析により判断▽施肥=早い時期に行い、秋口(9月)にすると果実の肥大を招く。施肥は前半までとし、秋は見送る方向で▽病害虫=かいよう病対策は防風対策のほか、薬剤の散布回数は増やす方向で、タンカンよりも多めに▽栽培推進=年内の贈答用として出荷するには、予措期間も考えると標高が高いところは厳しい。ポンカンを年内に出せないところは栽培に適さない可能性。平場を中心に栽培し、高いところでは無理には進めない―などをまとめた。

 試食の感想として女性から「果汁が多くタンカンに近いイメージ。糖と酸の状況から、濃ゆい柑橘」「3Lサイズだと女性なら一つでお腹いっぱいになる。Lくらいのサイズがいい」「じょうのうが薄くて食べやすい。甘みと酸味のバランスがいい」などが寄せられた。