徳之島で子宝・Uターン調査

調査研究入りした西日本社会学会(生活構造研究会)一行=11日、徳之島高校で

西日本社会学会
地域社会の維持再生モデル再構築へ
高校生向けキャリア教育も

 【徳之島】西日本4大学や研究所の「西日本社会学会(生活構造研究会)」(代表・高野和良九州大学大学院教授)一行の「子宝の島、徳之島を巡る生活構造分析と徳之島高校生向けキャリア教育」が10日~12日にかけてあった。文部科学省・科学研究費助成事業、研究プロジェクトの現地調査の第一弾。子宝の要因やUターン者(移動)など生活構造の分析、住民の生活実態や動態などを把握、「地域社会の維持再生モデルの再構築」を目指す。

 文科省の同助成事業名は「過疎地域の生活構造分析による人口減少に対応する地方社会モデルの再構築」(2016年度~18年度)。目的は、人口減少社会に対応し得る総合的な社会モデルの再構築。具体的には、著しい人口減少を経験した九州の山村・離島地域を対象とした生活構造を分析し、住民生活の実態や動態を把握。全般的な人口減少社会における「地域社会の維持再生モデルの再構築」を目指すという。

 調査来島したのは研究プロジェクト構成メンバーの九州大・熊本大・北九州市立大・下関市立大の4大学(順不同)の教授ら研究者と一般社団法人「トクノスクール・農村研究所」の徳野貞雄理事長(熊本大名誉教授)ら9人。伊仙町未来創生課が受け皿となって調査などに協力。11日は徳之島高の普通科社会学系の1、3年生17人を対象にしたセッションもあった。

 高野代表は生徒たちに「今は、都会の暮らしよりも地方の生活の方が魅力的との見方がある。金を稼ぐには都会の方が良いが、経済だけではない豊かさをちゃんと見たい」と調査目的を説明。徳野理事長は講義で、日本の合計特殊出生率(1・46)は「夫婦2人で1・4人しか生まれない。南西諸島(全国1位・伊仙町2・81など)は非常に高い。過疎の島だが、なぜ出生率が高いのか。ストーリーを設定して調査研究する必要がある」。

 高出生率の背景に「生活のしやすさがあるのではないか。生活は経済だけではない。家族や隣近所とのつながりもある」と推測。島民の8―9割は18歳(高校卒業)で外に出るが将来「帰ってくる・来ない人の割合が人口増減のターニングポイント(分岐点)」。Uターン者意識の把握など「足元の状況を知る大切さ」も説いた。

 高野代表は、3年計画で緒に就いた同研究プロジェクトについて「出生と移動。Uターンの魅力や子が生まれる力。これからの日本全体を考える上で役に立つと思う」と気を吐いた。