かがやき(下)

さまざまな体験活動も療育の大事なプログラムだ

子供の立場、安心感、的確さ

 辺木さんの気づき。2番目の子で女の子。1歳前から歩き始め、2歳、3歳と成長していく中で。「常に動き続けて目が離せなかった。何かが目に入ると、すぐに行動に出てそこに行ってしまう。自宅から出て車が通行する道路に飛び出そうとする、目の前にある海にも入ろうとする…毎日が危険との隣り合わせのような状態だった。言葉の発達も早かった」。

 車で出掛けるときも車内の席に座ることが出来なかったという。車から飛び出そうとすることも。動き続けるわが子。「気が抜けないので疲れることが多かった。このような状態で、保育所でやっていけるのだろうか…成長とともに不安が大きくなった」。

 重山さんは最初の子、男の子だ。気づいたのは1歳半健診のとき。言葉の遅れを指摘された。「まったく何もしゃべらなかった。でも一人目だし発達状況を比べることも出来ず、それほど深刻に考えずに心のどこかにとどめる程度だった」。3歳児健診のときに「要検査」と診断され、医師からのぞみ園を勧められた。「発達の遅れの指摘に信じられないとの思いが強かった」。

 療育によって徐々に変化が表れるように。言葉が出るようになり、5歳になると少しずつ会話ができるようになった。「お母さん」と話しかけ、自分の思いを伝えるまでに成長。6歳になった現在は急成長しているという。「療育施設をはじめ、いろんな人とのかかわりによってわが子が成長している。こちらの問いにも答えることが出来るまでになった。でも家の中ではおとなしいと感じられることもある」と重山さんは現在を語る。

 わが子に見られる特性。どのように向き合ったのだろう。「ただゆっくりなだけ。そのうち追いつくと自分に言い聞かせていた。『個人差、個人差』と不安を打ち消していた。周囲からも『それくらい大丈夫よー』と言われ安心していた」(嶽﨑さん)、「周囲からは『子どもは、がさがさするのが当たり前』『これくらいが普通。元気があっていい』などと言ってもらえるが、それだけでは片づけられない危険性や行動が理解されず苦しいときもあった」(辺木さん)、「医師の診断を受けてもなかなか受け入れることが出来なかった。そこでネットで調べてみた。『自分の殻に閉じこもる』という文言があり、確かに当たっていると思った」(重山さん)。

 ▽療育

 もこもこクラブを紹介された嶽﨑さん。月1回半年間通った後、2歳2カ月からはのぞみ園に毎日通った。通常の保育と療育の違い。嶽﨑さんは「子どもが嫌がるとき、どうして嫌なのかをじっくりと考えて、子どもの立場になって解決策を考えていくのが療育」と実体験から感じたことを説明する。

 現在は自宅に近い「かがやき」に移ったが、ここまで続けて来た療育による自身の変化をこう語る。「困る行動(嫌なときは反り返って暴れる)をするとき、『今一番困っているのは子ども自身なんだ』と思うと、優しく接することが出来るようになった。まだまだですけどね」。子どもの変化については言葉が出るようになったという。「お父さんとの会話でも自分の言葉によって、お父さんの反応を楽しむようなところが出てきた。野菜を切るなどの手伝いもしてくれる」。

 辺木さんは自宅に近い公立保育所からの利用だ。「かがやき」の開設を聞いて、就学までわずかな期間でも通いたい、療育を体験させたいと思ったという。それはのぞみ園を見学する機会があったから。「先生方の子どもへの接し方が印象的だった。子どもが出来ない部分に対し、それを黙認するのではなく、声掛けなどによって出来るように働きかけようとしていた。一人一人に対する細かい指導も新鮮に感じた。なぜ出来ないのかを見てもらえるという安心感があった」。

 週2回、午前中の「かがやき」の利用。「娘がちゃんと通えるかと不安もあったが、一度も行くのを嫌がったことがない。友達とのコミュニケーションでは相手の反応を待つことが出来るようになるなど精神的な成長を感じている。私もここに来るのが楽しい。他のお母さん方との交流で子育ての在り方を学んだり、考えたりすることが出来るようになった」と辺木さんは語った。

 重山さんは下の子が生まれたこともあり、「私一人では手に負えない」と悩んで保育所を利用した。療育を受ける前段階だ。長男の特性には多動性もあることから、保育所では行動を制限せざるを得なかったという。「当時は年少児。迎えに行くと子どもは泣き叫び、嫌がっているのが伝わった。自分が子育てから逃げてしまったばかりに…と思うと、子どもがふびんでならなかった」。当時を思い出したのだろうか。重山さんの目に涙がにじんでいた。

 少人数で行われている療育。「職員のみなさん、みんなで子どもを見守るという姿勢を感じる。一人一人の特性を的確にとらえ、その子に合わせた保育が行われている。名瀬まで行かなくても同じ町内に療育の場が設けられ、とてもありがたい」。

 ▽要望

 療育から今度は学びの場へと舞台が変わる。発達支援への思い。3人は口にした。「学校の特別支援学級の在り方にお願いがある。専門の先生、もしくはその研修をした先生、発達障がいについて興味・関心・理解のある先生が担当してもらいたい」「大学の教育学部の必須科目に発達障がいや療育に関することを設けてほしい」「今後も子育てに関する相談ができる体制(「かがやき」での学童保育等)があったら心強い」「学校で終わりでなく家庭、地域と縦のつながりが確立できたら」「地元の養護学校に通う場合、通学バスの利用になるが、自宅からそのバスの待合所(バス停)があるところまで遠い。自宅近くにバス停の開設など通学バスが利用しやすいようにお願いできないだろうか」。

 社会の支援によって子どもたちは成長する。まずは関心を持ち母子の「心のひだ」に触れてはどうだろう。それによって療育が財産になる。