奄美博物館で開かれたトークイベント
トークイベント「奄美の森と猫のこと。」(奄美ネコ問題ネットワーク主催)が7日、奄美市名瀬の奄美博物館で行われた。名古屋大学大学院生命農学研究科博士(農学)で、現在、宮崎大学フロンティア科学実験総合センター研究員の城ケ原貴通さんが講師として来島。ネズミを中心とした南西諸島の生物多様性について講演。世界自然遺産登録を視野にした、これから必要となる取り組みについて語った。
同イベントは奄美のネコ問題について考えようと定期的に開催している。この日は自然保護に携わる人や研究者、行政関係者、子どもなどが来場した。
城ケ原さんは南西諸島に生息するネズミのうち半数以上が固有種であり、日本全域は生物多様性のホットスポット(地球規模での生物多様性が高いにも関わらず破滅の危機に瀕している地域)であると説明。ネコのフンを調査し、ネコによる固有種の捕食状況を示しながら、「島であるからこそ守らなければならない。特に奄美は生物学的にみてもとても面白い地域で、世界中の研究者が注目している。そうした中で、ネコ問題を解決しないと遺産は無理という意見もある。それだけネコの問題は大きい」と指摘した。
講演では、世界にも3種しかいないというトゲネズミ(アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、オキナワトゲネズミ)を例に、城ケ原さんの研究について説明する場面も。その中では、通常、オスとメスを分類するはずの染色体が、アマミトゲネズミとトクノシマトゲネズミの2種は分かれていないことなどに触れ、「この2種がどうやってオスメスの判別をしているのか、実はいまだに解明されていない」など、興味深い事例も紹介した。
城ケ崎さんの講演後には、奄美猫部の久野優子さんが奄美のネコ問題について紹介。久野さんは「奄美大島の場合、一番の問題はネコの数の多さ。飼いネコ条例も今のままでは甘いのかなと思っている。ネコも人間も幸せになるために、ネコ問題を正しく理解し、大切に飼うような島になってほしい。これはネコだけでなく、自然全体の話。人間と自然の関わり方を考える時代になっているのでは」と呼びかけた。