希少植物 自生環境を守れ

徳之島固有種など希少植物の自生・保護状況を確認する関係者=27日、島南部

カンアオイ、テンナンショウ希少種3種
開花期に入っている、左から「タニムラアオイ」「トクノシマカンアオイ」「オオアマミテンナンショウ」=27日、島南部

奥山研究員も協力
徳之島自然保護協、観察点検

 【徳之島】徳之島地区自然保護協議会(松村博光会長、15委員)の関係者は27日、同島固有種の「トクノシマカンアオイ」や「オオアマミテンナンショウ」など希少植物の観察を兼ねて保全状況を点検。調査来島中の国立科学博物館筑波実験植物園(茨城県つくば市)の奥山雄大研究員(35)も解説協力。偶然が生んだこれらの生息環境を開発・かく乱から守ることの重要性もあらためて強調した。

 分布ポイントの現状も把握して保護施策など提言も目的。天城町当部公民館(旧分校跡)を発着点に関係者約15人が参加。3町の希少植物の一部分布ポイントをほぼ終日巡視。同島固有種「トクノシマカンアオイ」(ウマノスズクサ科、国レッドリストⅡ類)や「タニムラアオイ」(同科)、「オオアマミテンナンショウ」(サトイモ科、同ⅠA類)。国内では同島北部の畑地畦畔=けいはん=の一点のみに自生するとされる「ホウザンツヅラフジ」(ツヅラフジ科、同同)などの自生状況も観察した。

 現地講師に協力した国立科学博物館の奥山研究員は、奄美市在住の生物研究家森田秀一さんが2011年3月に奄美大島の山中で見つけたチャルメルソウを5年間かけて新種と確認。1年前に「アマミチャルメルソウ」として日本植物分類学会英文誌に発表したことでもおなじみ。今月24日からカンアオイの株間の受粉に、花粉を運ぶ虫を突き止めることなどを目的に調査入りした。

 島西部の「タニムラアオイ」の小規模群落地で奥山研究員は、「カンアオイの仲間は日本全国で約50種。いずれも乱採取されているのが現状。自生地は限られていて、樹木を切って明るくなると乾燥して枯れてしまう。約20年と長生きする一方、数は増えない。子株があるところは健全で、親株を採ってしまうと一気に繁殖が回らなくなる」と指摘。

 繁殖は「虫の力」による花粉運搬が不可欠とし、「(自然界に)一株だけ残ってもだめ。持ち帰って一株だけ植えても種はつかない」と、暗に盗採行為の無意味さにもくぎを刺す。悠久の歳月での偶然が生んだ生息環境ゆえに、開発などに伴う「移植行為」の無意味さも指摘する。

 自然保護協の松村会長は「3町の行政は希少種の保護にもっと関心を持って乱開発・破壊による絶滅防止を図るべき。懸念されるポイントは、町有地化も検討すべきと思う」と話した。