〝闘牛魂〟を炸裂させキックボクシング新王座に就いた伊仙町典久選手(提供写真)
【徳之島】愛する故郷をリングネームに冠したキックボクサー、その名も伊仙町典久(本名・中川典久)選手(31)=大阪府在住、BLA-FREY所属=が2月25日、東京・後楽園ホールであったJ-NETWORKスーパーバンタム級タイトルマッチに挑戦。3冠王のチャンピオンに〝闘牛魂〟の怒とうの連打を浴びせKO勝利し、新王座に就いた。
伊仙町典久選手は、闘牛が盛んな徳之島の伊仙町伊仙出身、地元の樟南第二高校卒。在学時に自ら闘牛を飼養するほどの闘牛ファンで、牛に寄り添って操り戦意を高揚させる闘牛士・勢子(せこ)を志す。だが勢子で出場中に、今も胸に長さ約20㌢の傷跡が残る負傷事故に遭ったのを機に勢子の道を諦めて上阪。戦いとは無縁の介護職に就いた。
170㌢、63㌔。伊仙小、中学校は野球に没頭し、格闘技は高校時代に1年足らず新極真空手道場に籍を置いた。未知のキックボクシングへの傾倒のきっかけは、勤務先の近所のジムに出稽古に訪れた当時・J-NETウェルター級王者・北山高与志氏(元世界王者、現BLA-FREY代表)との出会い。「血を吐くようなボディブロー」を味わい闘牛仕込みの闘志が再燃。その場で弟子入りを志願したという。
25歳と遅めのデビューだったが、闘牛魂と勝負強さを発揮した。13年にRISE新人王トーナメント・バンタム級で準優勝するなど頭角を現し、昨年7月からJ-NETに参戦。2連勝で今回のタイトルマッチ挑戦権を獲得。戦績は17戦10勝6敗1分け。
タイトル戦では、王者・渡辺優太選手(ほかWMC、元MA日本スーパーバンタム級王者)を最終3ラウンド、強烈な左ロー攻めなどで2度目のダウンを奪うと、〝闘牛の速攻・腹取り〟をほうふつさせる怒とうの連打から、最後は右アッパーのクリーンヒットで沈めた。
「師匠の北山会長に一歩でも近づきたかった。おばあちゃん(中川トキさん)や(世話人・スポンサーの)道山俊男氏など、応援をいただいた多くの皆さんのおかげです。いろんな方々に支えられて幸せ」。物腰がやわらかく格闘技家をイメージさせない優しい性格の持ち主。リングネームは「都会では徳之島・伊仙町を知らない人が多い。知っていても昔の過熱選挙の悪いイメージが。格闘技を通じて故郷をアピールしたい」思いからだ。
同郷で親戚筋でもある世話人の道山氏(75)=大阪市、豊富グループ会長=も「出場テーマソングも『ワイド節』を使う故郷思い。まさかの勝利に2人で抱き合って男泣きした。練習に専念できる環境を整えて初防衛に備えて欲しい」と感無量の表情で話した。