屋久島から学ぶ、自然遺産講話

来場者を前に世界遺産の先進地事例について講話する田中さん

登録効果「総合的に波及を」
奄美・屋久島連携提言も
鹿大環境学研

鹿児島大学環境学研究会in奄美大島「屋久島から学ぶ、本音で語る世界自然遺産」(同研究会主催)が2日、奄美市内の集宴会場であった。環境省屋久島野生保護官事務所・首席自然保護官の田中準さんが講演。来場者は世界自然遺産登録の先進地事例から見る観光のあり方や取り組みについて考えた。

田中さんは2008年から4年間、奄美野生生物保護センター(大和村)で勤務した経歴を持つ。この日は行政機関や観光関係、一般など来場した約100人を前に、1993年に登録された屋久島の現状を語った。

これまでの経緯について、登録直後から同島へ入込みが増加。宿泊、レンタカー、ガイドなどの各産業が活性化し第3次産業では観光面が大きく成長したことを振り返った。

一方で、入山者の急増に山間部の受け入れ施設やルート整備が追いつかず、繁忙期はトイレの混雑など問題が発生。対応が後手に回ったため、本格的な対策が実施できたのはピーク(07年)後。現在、入山者数は減少傾向が続いているという。

18年夏頃と見込まれる奄美地域の登録について、田中さんは「屋久島は奄美にとって先進地事例ではなく、世界遺産はすでに珍しいものではない」と指摘。奄美らしさのある取り組みを挙げ、「登録による効果を総合的に波及させていくことが大切」として、奄美と屋久島との連携などを提言した。

その後質疑応答があり、財団法人化の必要性について「先進地・知床では全体の調整役、不協和音の緩和として機能している」。マイカー規制については「黒字収支など一定の効果はあったが、ガイドは全面的に賛同的ではなかった」などの説明に、来場者は耳を傾けた。