生物多様性シンポ

外来種問題に対する住民啓発の重要性などに理解を深めたシンポジウム

外来種問題の住民啓発を
モニタリング、抑制策実施へ

生物多様性シンポジウム「薩南諸島の外来種」が4日、奄美市名瀬のAiAiひろばであった。同諸島地域の外来種の調査研究などを行う専門家9人が、生息現況や基本生態などを紹介。外来生物は根絶が難しく、その土地の生態系への影響が懸念されることから、移入している外来生物のモニタリング調査や排除活動を行うとともに、新たな種の侵入防止に向け、地元住民への啓発活動について共通理解を深めた。

同シンポジウムは鹿児島大学「薩南諸島の生物多様性とその保全に関する教育研究拠点整備」プロジェクトが主催。同地域における重点調査研究から、①農作物被害とその対策②在来生態系にはびこる外来種③島内での取り組み―の3部構成で発表があった。

奄美海洋生物研究所の興克樹会長は、奄美大島の河川などに生息する淡水カメや外来魚など水生移入生物の調査結果を発表した。外来魚が泳ぐ河川の映像や繁殖の可能性が高いスッポンの事例を紹介し、「餌生物の競合や捕食を介し、在来生物に対する影響が懸念される」と解説。外来生物が定着している水域を明らかにした上で、モニタリングの継続や増殖抑制策を講じるなどの課題を述べた。

顕自然環境研究センターの松田維研究員は、奄美マングースバスターズの防除について、2000年頃に約1万頭まで増加したマングースが、14年度には100頭以下まで減少し、アマミトゲネズミなど在来生物の生息域が拡大していることを報告。残存する個体排除の改善策として、ピンポイントチームによるわな設置が難しい場所での捕獲作業実施や化学的な防除の検討などを挙げた。

また新たな外来生物を生まないため、松田研究員は①入れない②捨てない③拡げない―の3原則をアドバイス。「外来生物自体は悪者ではない。悪いのは持ち込んだ人間」として、安易な生き物の持ち込みや遺棄など、外来種問題に対する住民の理解の必要性を訴えた。

このほか、15年に奄美大島で36年ぶりに発生したミカンコミバエ種群の根絶防除の経過報告、喜界島や徳之島でのゴマダラカミキリの防除、は虫類・両生類の視点からみた外来種問題の発表もあった。