対馬丸慰霊碑除幕式

船越海岸で焼香し合掌する遺族

慰霊碑の前で記念撮影する久志小中学校の児童生徒と遺族たち

除幕された「對馬丸慰霊之碑」

遺族ら鎮魂の祈り 宇検村船越海岸
沖縄から27人参加「平和の塔に」「平和の尊さ次世代に」

太平洋戦争中の1944年8月に米軍の潜水艦の攻撃で沈められた学童疎開船「対馬丸」の生存者や遺族ら関係者が19日、多くの遭難者や犠牲者が漂着した宇検村船越=ふのし=海岸を訪れた。遺族らは同海岸に建立された「對馬丸慰霊之碑」の除幕式に参加し、対馬丸事件の犠牲者の鎮魂を祈り平和への願いを新たにした。

慰霊碑除幕式には、事件の生存者5人と遺族9人を含む27人が沖縄から参加。遭難者や犠牲者が漂着した関係町村(瀬戸内町・大和村・宇検村)からの参加者も合わせ約100人が式に集い、遺族らと共に神事を見守り鎮魂を祈った。

除幕式に先立ち遺族らは同海岸の浜辺に下り立ち、沖縄に残った遺族から託されたお菓子や千羽鶴などを献花と共にお供えして焼香した。遺族らは打ち寄せる波を前に合掌し、犠牲者の鎮魂を祈った。生存者の一人平良啓子さんは焼香後に「慰霊碑が出来てありがたい」と喜び、「二度と戦争を繰り返してはならない」と平和への決意を語った。同じく生存者の上原清さんも「シンボルが出来て良かった。平和教育・命の教育をしてほしい」と述べた。

浜辺での焼香合掌を終えて遺族らは、慰霊碑の前に戻り除幕式に参列した。

開会あいさつで元田信有村長は、対馬丸事件の犠牲者の無念さを悼み、「沖縄と交流を深めて、平和で安らぎのある地域づくりを進めていく」と決意を述べた。

遺族代表と同村久志小中学校の児童生徒で、対馬丸慰霊碑の除幕が行われ、神主のお祓いや祝詞奏上などが雨の降る中、滞りなく実施された。式で慰霊碑の碑文を、同校生徒の要凱仁=かいと=君(中2)と野上田一兵君(中1)が朗読し、慰霊碑の台座に刻まれた短歌を、作者で対馬丸の遭難者の救助作業に当たった同村宇検の大島安徳さんが紹介した。

来賓あいさつで沖縄県の浦崎唯昭副知事は、奄美の人々による当時の救助活動や犠牲者の埋葬と事件を語り継いで来たことに感謝し、「慰霊碑が平和の塔となることを祈る」と述べた。大島支庁の鎮寺裕人支庁長は、犠牲者の鎮魂を願い「慰霊碑建立で戦争の悲惨さと平和の尊さが次世代に引き継がれて欲しい」と期待した。

遺族代表であいさつした又吉昌子さんは、慰霊碑の前で涙ぐみながら、事件で亡くなった姉に呼び掛けて追悼し「慰霊碑を守って欲しい。またこの地に来ることを願っている」と語った。

除幕式終了後に、慰霊碑の近くにコクタンの木2本が記念植樹された。

除幕式に参加した同村久志小中の要君は、事件のことを大島さんから聞いて元気の出る館の企画展でも学習し、「これからも対馬丸や平和の尊さを学んで行きたい」と話した。シマの語り部として事件を語ってきた大島さんは、慰霊碑建立を長年の念願が実現したと喜び、「出来るだけ長生きして、対馬丸のことを語り続けて行きたい」と語った。

遺族らは、奄美に慰霊碑が建立されたことを喜んで、除幕式終了後に慰霊碑の前で同校の児童生徒と記念撮影をして同地を後にした。