琉球列島で最古の植物遺体

半川遺跡から検出された琉球列島最古の植物(シイ属)遺体=提供写真

龍郷の半川遺跡検出旧跡時代に採集生活か
鹿大島嶼研高宮教授報告

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの高宮広土教授は7日、奄美市名瀬の同センター奄美分室で会見を行い、龍郷町赤尾木の半川=はんごー=遺跡から琉球列島で最古の植物遺体(シイ属)が発見されたと報告した。同遺跡が、旧石器時代まで遡る可能性があるとして再調査の必要性を提言した。

 龍郷町の半川遺跡は、周知の遺跡として2004年に龍郷町教育委員会が発掘調査を実施し、竪穴住居跡と土器や石器などが発見されている。出土遺物などから貝塚時代前2期(縄文時代前期頃約6千年前)相当の遺跡と考えられていた。

 当時、遺跡の調査指導を行った熊本大学の小畑弘己教授と奄美博物館の中山清美元館長が、町教委の調査対象区域外の隣接地で露出している土層断面観察を実施して炭化堅果類を確認。2005年に、県立大島北高校の中原一成教諭と郷土クラブの男子生徒5人で龍郷町が調査した地点の隣接地で発掘調査を実施した。調査では土器や石器などに混じり、炭化物も発見されたことから後日の調査のためにサンプルとして排土を採集。中山元館長が、フローテーション法で遺跡から採集した排土から炭化堅果類が多数検出された。検出した堅果類の種の同定と年代測定などを高宮教授に依頼したという。

 今回の報告は、高宮教授が外部機関などに分析を依頼して、今夏に刊行される『中山清美氏追悼論文集』に掲載される原稿の一部として行われた。中山元館長が提供したサンプルから、373点の炭化物を確認しシイ属と判断したものが8点。堅果類と判断されるものが187点、カラスザンショウ1点、判別不明177点だった。シイ属の2点を外部機関加速器研究所が分析して、炭素14年代測定法で約1万1200年年前と琉球列島では最古の植物遺体とされた。これまでに発見されている堅果類で最古とされていたのは、沖縄県北谷町の伊礼原遺跡出土のシイ属で約6000年前。今回の発見で高宮教授は、「旧石器時代にシイなどを採集していたかもしれない」として、今後の調査などで琉球列島の旧石器時代の食性解明に期待を寄せている。またシイ属や堅果類が大半なので、自然の遺物検出状況とは考えにくく「当時の人が持ち込んだ可能性が高い」とした。

 日本列島では、鹿児島県志布志市の東黒土田遺跡や宮崎県都城市の王子山遺跡から約1万3千年前~約1万1500年前のコナラ属が貯蔵穴などから発見されており、今回の半川遺跡のシイ属も日本でも古い部類の事例となる。奄美で旧石器時代の遺跡と考えられているのは、奄美市笠利町の土浜ヤーヤ遺跡、喜子川遺跡、赤木名グスク、徳之島の伊仙町天城=あまんぐすく=遺跡で、高宮教授は人が住んでいた可能性について「今後、他での類例を待ちながら半川遺跡で再調査して、生活の根拠になる住居跡や石器などを発掘して再検証する必要がある」と報告した。

 龍郷町が調査した報告書でも、出土した炭化物に炭素14年代測定法を実施して最古の資料は、約1万50年前と分析されたデータが参考に掲載されている。今回の報告で、奄美で旧石器時代に相当する時期からシイ属の採集が行われて来たことが確認され、今後の調査研究の進展が期待されそう。
フローテーション法 発掘で掘った土を水槽に入れ撹拌し、浮き上がったものをふるいにかけて炭化物や微量の動植物遺存体を取り出し乾燥させて検出する選別