大島 決勝ならず

【準決勝・大島―神村学園】8回表大島一死二塁、6番・盛山の左越え二塁打で二走・太月(右)が生還、3―4と1点差に追い上げる=県立鴨池

神村と対戦 追い上げ、あと一歩

春高校野球第13日

 【鹿児島】第140回九州地区高校野球大会鹿児島県予選第13日は9日、鹿児島市の県立鴨池球場で準決勝2試合があった。

 奄美勢の大島が第4シード神村学園と対戦。4点差を追いかける八回に4番・太月の右越え二塁打などで3点を返し、追い上げムードを作ったがあと一歩及ばず、3―6で敗れた。

 最終日は10日、鴨池市民球場(※県立球場整備のため)で神村―鹿児島実の決勝がある。

 【評】序盤で4点を失った大島だが、四回から登板した右腕・本田が七回までを無失点で切り抜け、中盤で試合を立て直した。八回、先頭の2番・濱田、3番・有馬が連打で出塁。4番・太月、6番・盛山の二塁打で3点を返し、1点差に詰め寄った。八回裏に2点を失い、3点差とされた。九回表は一死から再び濱田、有馬が連打で一三塁の好機を作ったが、併殺で打ち取られ、反撃もここまでだった。

序盤の失点重く
守備から流れ作れず
大島

170409大島スクイズ失敗

【準決勝・大島―神村学園】8回表大島一死一三塁、セーフティースクイズを仕掛けるも三走・盛山は本塁タッチアウト=県立鴨池

 大島にとっては序盤の4失点が重かった。塗木哲哉監督は「守備から流れを作る」展開を描いていたが、神村学園の強打、巧打の前に序盤でプラン変更を余儀なくされた。

 初回に3番・田中怜に2点適時打を浴び、二、三回は二死から得点された。「緊張して思うようなボールが投げられず、甘くなったところを打たれた」。先発のエース中村をリードした捕手・盛山諒は分析する。神村の打者は選球眼が良く、2ストライク追い込まれてもファールで粘り、甘いボールを逃さなかった。

 長打を封じるべく、右翼に重村、左翼に吉見と守備力のある選手を起用し、ポジショニングにも工夫を凝らしたが、間を抜かれた3本の長打が失点につながった。

 守備から流れは作れなかったが、四回からリリーフした本田が試合を立て直して中盤を踏ん張り、「終盤勝負」(塗木監督)に持ち込むことはできた。

 八回、持ち味の集中力を発揮し、1点差に迫ったが、4点目を取りにいったセーフティースクイズが大きなヤマ場だった。8番・本田はバットに当てて転がすことはできたが、本塁タッチアウト。ボールを手に当ててしまったことで、その裏のマウンドに上がれず、追加点を許した。

 「ちょっとしたことの積み重ね、かみ合わせで試合の流れは大きく変わる。自分の采配も含めて、まだまだ力が足りなかった」と塗木監督。初の決勝進出は果たせなかったが、20日間の長期滞在の経験で夏甲子園を勝ち取るための数多くの「ヒント」を得ることができた。濱田雄一郎主将は「もっと成長する」と闘志を燃やしていた。
(政純一郎)

流れ変えた仕事師たち
大島

170409大島・本田

170409大島2点目

(※写真は「大島・本田」「大島2点目」)

 立ち上がりから苦戦を強いられた中で、大島は選手たちが与えられた仕事をこなし、終盤に見せ場を作った。

 「後から出てくる選手は流れを変えるのが仕事」

 本田智揮=写真上=は四回からその一念でマウンドに上がった。強打の神村打線に対して「打たれても構わないので厳しいコースを突く」投球で四―七回までゼロを並べ、相手かに傾きかけた展開を、踏みとどまることができた。

 遅まきながら守備から攻撃への流れができたのが八回だった。連打で一二塁の絶好機に4番・太月幸が右越え二塁打を放ち=写真下=反撃の狼煙を上げた。「いつも通りの自分の打撃をするだけだった」と太月。劣勢の展開だったが、前チームから中軸を打ってきた主砲は「甘い球を積極的に打つ」姿勢をぶれずに貫き、3球ファールで粘って高めに甘く入った直球を逃さなかった。

 「幸が打ったので気持ちが乗った。後ろにつなぐつもりで打席に立った」6番・盛山諒は内角低めのボールをうまく拾って3点目を呼び込んだ。今大会、苦戦続きだった試合でも勝機を引き寄せた「ここ一番での集中力」(塗木哲哉監督)は神村学園相手でも通用することを証明してみせたシーンだった。
(政純一郎)