果実高度利用セミナー

タンカンの酵素剥皮技術を解説する鮫島講師

20170412(果実高度利用セミナー)2
酵素液に浸したタンカンじょうのう(前)とじょうのう膜を除去したタンカンじょうのう(後)

タンカンに付加価値
加工技術習得 酵素で剥皮容易に

 大島地域かごしまの〝食〟交流推進協議会(会長・山下仁司奄美市農林振興課長)と県大隅加工技術研究センターは12日、奄美市住用町の同市農林産物加工センターで奄美大島地区果実高度利用(酵素剥皮技術)セミナーを開いた。奄美大島内の食品加工業者や農業者、関係機関などから約50人が参加して、講師から酵素剥皮技術を学び、タンカンを使用して剥皮技術の実演を行い食品加工技術の習得に努めた。

 同セミナーは、農産物の付加価値向上を図るために食品加工技術の習得を目指して開催。今回は、酵素処理によるタンカンの皮むきとその利用方法が研修内容だった。講師を県大隅加工技術研修センターの鮫島陽人研究専門員が担当した。

 セミナーの冒頭、山下会長は2017年のタンカンが豊作で値崩れしたことから、セミナー開催の趣旨を「タンカンの付加価値を高めて農家の生産意欲を向上させるため」と説明した。

 続いて鮫島講師から、酵素処理による剥皮技術の原理や利点が説明されて、参加者はメモや携帯電話などで写真撮影しながら記録を行った。講師によると今回の処理で用いる酵素は、タンカンのアルベド(皮と実の間の白い部位)とじょうのう膜に含まれるペクチンを分解する酵素ペクチナーゼで「細胞には影響しないので非常に安心・安全である」という。

 座学の後、参加者は実際にタンカンを用いて酵素剥皮技術を体験した。酵素剥皮技術の作業工程は、▽前処理として、酵素液が浸透しやすいようにタンカンの上端下端を切除し、果皮に十字の切り込みを入れる▽酵素液(マセロチーム2A0・25%液)に果実を入れ減圧含浸(真空ポンプで5分間脱気後、常温で2時間静置)▽外皮除去後に、果肉をじょうのうごとに外して酵素液に浸して2時間静置▽じょうのうを水洗いしながら、維管束と種子、じょうのう膜を除去。参加者は前処理されたタンカンの外皮除去やじょうのう膜除去などの作業を体験した。容易にタンカンの皮むきができて、参加者からは驚きの声が上がっていた。

 他にも酵素剥皮技術の利点として、一般的な処理方法と比較すると①外皮を低温で処理するため香りを維持できる②酸やアルカリなどの薬剤を使わないで処理が簡単―が挙げられるという。参加者は、講師が作成したタンカン果皮のピール(砂糖漬)などを試食し、実際に酵素剥皮技術で処理したタンカンのシロップ漬けを作成して研修の成果品として持ち帰った。

 これまで、食品加工技術に関する研修会に度々参加してきたという龍郷町の食品加工グループの㈱あいかなの中村孝代代表は、タンカンの酵素剥皮技術を体験して「いい技術で、導入して活用を検討したい」と述べた。県大島支庁農政普及課は7月、大型加工機材を用いた農産加工実習「奄美大島地区農業大学校農村生活研修課農産加工基礎研修」を開催するという。