庁舎新設 防災機能強化

熊本地震をきっかけに、庁舎など防災拠点の強化を図る動きが全国各自治体で進む、奄美市名瀬総合支所は免震機能も併せ、2018年12月の完成を予定している(資料写真)

奄美でも熊本地震教訓に対策進む
ソフト面も見直す機運高まり

 熊本地震では、倒壊の危険から、熊本県内5市町の本庁舎が使用できなくなった。災害時、応急対策の実施拠点ともなる庁舎について、耐震補強や新庁舎建設を検討したり、防災計画を見直したりする動きが全国に広がっている。鹿児島県内でも庁舎の安全性を確保する動きはみられ、地震発生から1年の間に耐震基準を満たす庁舎の数は上昇。奄美群島内においても、今後の検討も含め庁舎の耐震強化、住民が避難する施設等の改修など防災機能の強化などが図られており、震災を一つの教訓として、有事への対策が進められている。

 総務省消防庁が発表した調査結果(調査基準日=2016年3月31日)では、震度6強以上の地震でも倒壊しないことが求められる現行の耐震基準を満たしていない恐れがある庁舎は鹿県内で21あった。県危機管理防災課によると、現在は17庁舎。この1年で、補強工事や建て替えで4庁舎が新たに基準をクリアしたことになる。「耐震化などについて決めるのはそれぞれの市町村だが、今後も、説明会等で検討材料になりそうな情報を知らせていきたい」と担当者は話す。総務省は、これまで対象外となっていた、耐震基準を満たさない庁舎の建て替えについて、今年度から財政支援する方針を打ち出している。

 群島内をみると、奄美市の名瀬総合支所の庁舎建設が始まっており、和泊町や与論町でも今後建設が進められる。与論町は以前から、新庁舎計画があったが、熊本地震をきっかけに、庁舎機能の移転を決めた。「職員の命を守る上で猶予ならない状況」(防災担当職員)と、5月から町内施設5カ所に、各課が分かれて移される予定という。

 宇検村では、昨年度実施済みの庁舎の耐震調査を基に、これから協議を進める。16年9月、沖縄県本島近海を震源地とする地震で、震度5弱の揺れを観測した知名町では、昭和30年代に建てられた庁舎について、建て替えを検討する委員会を今年度中に設置、また、集落民が避難する公民館などの施設改修を3カ年で推進する。

 瀬戸内町では、18年に防災拠点施設の完成を予定。天城町では「熊本地震を受け、さらに住民へ災害に関する周知をしていきたい」(担当者)と青年会議所(JC)と共同で、今年度新たに、啓発的な取り組みを行うという。

 ソフト面についても見直す機運が高まっている。被災自治体が物資や人の支援を円滑に受け入れる「受援計画」は、災害対策基本法で策定が求められているが、市町村で計画があるところはごく一部に限られている。内閣府はこのほど、全国の自治体が受援計画をつくるための指針を公表。災害時、都道府県に調整本部、市町村に受け入れ窓口を設置し、物資の調達や避難所の運営など連携することを求めている。

 龍郷町は熊本県菊池市と友好都市関係を結んでおり、震災発生から数日も経たない間に、町職員らが水の緊急支援で現場に入った。「大渋滞など困難な状況を目の当たりに。自治体職員の話を聞きながら、防災について参考になる部分があった」。「物資の調達など、自治体からの受援を含め、いろいろな選択肢を準備しておくため、どう受け入れていくかも考えていく必要があると感じた」(担当職員)。熊本の震災被害を教訓に、今後も島民の安心・安全のため、総合的な防災強化を図っていく必要があるだろう。