「田植え歌」を県文化財に

ちびっ子も交え「前野田植え歌民謡保存会」の田植え歌実演会=22日、天城町

天城町前野、老若男女で実演

 【徳之島】天城町の前野田植え歌民謡保存会(中水勝久会長)主催の田植え作業が22日、同「田植え歌」(町無形民俗文化財)の実演を交え、同集落唯一の体験用ミニ水田であった。雨の中、会員をはじめ岡前小児童ら子ども会や保護者など約35人が参加。軽快な歌掛けにのせて田植えを体験し、昔ながらの田園光景を再現した。

 男女掛け合いの「田植え歌」は琉球列島では徳之島にだけに伝わる伝統歌謡。大規模な「ミィータ (新田)」の田植え祝いや労働の促進、儀礼的には豊穣=じょう=・予祝祈願やユイワク(交換共同労働)の人集めの知恵だったともいわれる。

 昭和40年代の減反政策によって水田が消滅したが、前野集落では1976年に民謡保存会を結成し、子ども育成会なども巻き込んだ練習会を継続。稲作文化に基づく伝統芸能の伝承保存に力を入れている。

 田植え歌実演と同作業体験用のミニ水田(約2㌃)は2012年、町教育委員会(学芸員)らの尽力で文化庁の「地域の文化遺産を活かした観光振興事業」も活用し、約半世紀ぶりに復活設置したもの。今年で6年目の実演・体験取り組みとなった。

 同民謡保存会の中水会長(67)は参加者たちを前に「前野の田植え歌を、天城町第1号の県指定文化財となった『戸森の線刻画遺跡』に続く第2号に、との気持ちを込めて植えましょう」とアピール。民謡保存会元会長の森田マキ子さん(83)ら唄者たちの田植え歌にのせて、ちびっ子らが会員たちの手ほどきを受けつつ慣れない手つきで苗を植えた。夏に収穫し、餅は敬老会などで振る舞われる。