クロウサギ野生復帰

奄美の森へ野生復帰するクロウサギ(=伊藤圭子獣医師提供)

事故防止へ「優しい運転心がけて」

 環境省奄美野生生物保護センターは28日、交通事故に遭い鹿児島市の平川動物公園で治療を続けていたアマミノクロウサギが体調回復したとして、奄美に移送し森に野生復帰させたと発表した。同センターは野生復帰を喜び、被害が出ないようクロウサギの事故防止を呼び掛けている。

 同センターによると、野生回復した個体は昨年11月28日、奄美市の県道79号線で交通事故に遭った。住民が発見して保護し同市の「ゆいの島動物病院」に運び込まれて、伊藤圭子獣医師が治療を実施。伊藤獣医師は保護時の様子について、クロウサギの左眼付近が膨張し、意識もうろうで神経症状(首を傾げてぐるぐる回る動作)が出ていたという。

 クロウサギは長期的な治療が必要と判断され、昨年12月17日に鹿児島市の平川動物公園に移送され継続治療。治療の結果クロウサギは、自力で餌を食べられるようになり神経症状も治まり、体重が1320㌘から約1900㌘と成長。クロウサギの体調回復が見られたことで奄美での野生復帰が決まった。

 野生復帰に立ち会った同センターの岩本千鶴自然保護官は、「クロウサギが住民の協力で、野生復帰できることをうれしく思う」と述べた。マングース駆除事業でクロウサギの生息域が回復して拡大し、人間とクロウサギが出会う機会が増えているため、「地元の人や観光で来ている人は、車の運転に十分注意して優しい運転を心がけてほしい」と呼び掛けた。