70周年合わせソテツ植樹

世代を超えて友好のソテツの前に集う人たち。奄美と中村小学校の絆は続いていく

植樹式終えて
植樹式を終えて充実した表情の、島岡稔さんと井上靖中村小校長

練馬の中村小 奄美との友好、交流示す

【東京】練馬区の中村小学校で29日、「開校70周年 奄美・中村小学校『蘇鉄』植樹式」が晴天の下、多くの関係者らを迎えて盛大に開催された。

この日の東京地方は、奄美を思わせる陽気。空も式典を祝うように晴れ渡った。植樹式には、中村小の6年児童、PTA関係者、地元の来賓らに交じって奄美出身の人々も参列した。井上靖校長は、中村小と奄美の名瀬小との交流について説明した後、「ソテツは、よみがえる鉄と書きます。どんな困難にも打ち勝っていけるよう強い鉄のように育ってほしい」と児童らに呼び掛けた。

また、「奄美と中村小学校の友好を支援する会会長」の島岡稔さんは、日本復帰直前の12月に出版社の企画で、復帰祝賀使節として奄美を訪れた中村小の2人の児童と名瀬小の6年生として交流したことを説明。「今でいえば、パンダが来ると待ち望んで手製の日の丸小旗を持って港に向かった。その後、40年ぶりに奇跡的な再会があった」ことなどを懐かしそうに語った。そして、70周年に合わせてソテツを贈ることになった 経緯も報告された。

練馬区教育委員会の河口浩教育長、卒業生として、小林みつぐ練馬区議会議員があいさつ。井上校長と島岡さんによる植樹が、出席者が見守る中で執り行われた。ソテツは雌株で奄美市笠利町から運ばれた樹齢100年を超えるもの。設置に当たった中村小の卒業生で神田造園の神田靖仁さんは、「これほどのソテツはあまりお目にかかれない。素晴らしい」と驚いていた。

このほか、島岡さんが作詞(作曲・伊地知元子さん)した「はるかな友へ~蘇鉄の風~」の記念歌が斉唱された。1993年、本紙(当時・大島新聞)の企画がきっかけで、”涙の40年ぶりの再会”を果たした島岡さんは、中村小の創立70周年に合わせて、奄美のソテツを贈るプロジェクトを立ち上げた。

やがて東京奄美会 、練馬奄美会、中村小などの各方面から100万円を超える寄付金が集まった。今回植樹された右側には、実は雄株のソテツがある。それは、60周年の記念に奄美を訪れた同校関係者が、奄美を後にする際にお土産として頂き、植えたものだという。53(昭和28)年、奄美と東京の児童による記念写真には、照れた表情ながら誇らしげな彼らの後方に、ソテツが写っている。

それから60年以上の月日が流れ、景色は変わった。だが、「奄美大島にも中村小学校の70周年を喜んでくれる方々がいると知り、うれしかった。ソテツは、10年か15年という長い年月をかけて花を咲かせる。私も夢に向かって花を咲かせられるよう頑張りたい」(児童代表)。世代を超えて、続いていく奄美と中村小学校の絆を、ソテツはこれからも見守っていく。