支え合う(下)

支え合う下
下方地区での支え合い活動は子ども会との連携で進められている(右がコーディネーターの勝村さん、左が浜里町子ども会会長の當郷さん)

活動推進、地域力に磨き

子どもたちによる地域福祉活動(ごみ捨て代行事業)実施にあたり勝村さんは文書化を徹底している。小宿っ子お助け隊Q&A、実施要項、利用・委託契約書だ。このうち注目したいのがQ&A。「病気やその他の理由で、ごみ捨てに行けなくなった場合は?」「利用者の方から『お礼に』と言って、現金・お菓子をもらった。どうしたら良いか?」といった内容。活動にあたり考えられるトラブルや疑問等を細かく記しており、それに対してどんな対応が必要か明確に示している。

「子どもたちの活動を私だけが関係するのではなく、他の保護者などだれでも携われる仕組み(文書化)をつくりたかった。それによって活動が継続できる。一過性のものにせず、活動を持続させたい」(勝村さん)。

今後の地域支え合い活動では高齢者の交流の場づくり、買い物弱者への支え合い活動なども計画。こうした地域福祉を推進することで地域力に磨きがかかるが、これは観光振興にも役立つというのが勝村さんの見解だ。「奄美群島国立公園が誕生し、世界自然遺産に登録されると多くの観光客が訪れるだろう。奄美は住民が生活する場と自然が近い。地元の人々と観光客が接する機会は多い。それだけに住民が支え合いながら生き生きと暮らす様子は、観光客に魅力的に映るだろう。自然や文化だけでなく、そこでの暮らしも魅力的として観光資源になる。観光客の中には将来、奄美に移り住もうと考える人々も出てくるのではないか」。

▽連携

子どもたちによる地域福祉で勝村さんが連携を図っているのが浜里町子ども会と、その保護者で組織する育成会。会長を務める當郷裕之さんによると、子ども会の会員は小中学生約140人で、8割とほとんどが公営住宅に入居しているという。「浜里はいろんな地域から人々が転居してきた『寄せ集め』のような所。まとまりが課題。地域行事への参加者の少なさだけでなく、さまざまな団体の役員の選出にも苦労している。自ら役員になって地域に積極的に関わっていこうという人が少ない」。當郷さんは嘆く。

こうした「住宅のまち」の気風は子どもたちの活動によって変わるかもしれない。子どもたちが関係する年間行事をみてみよう。新年度に最初に行われるのが新1年生の歓迎会(転入生も含めて)だ。夏休みにはラジオ体操、市の子ども会連絡会の行事への参加(子ども祭り、球技大会)、下方地区独自の運動会や相撲大会への参加もある。子ども会・育成会独自の行事では親睦の意味合いがあるバーベキュー、もちつき大会のほか、安全安心の地域づくりに向けて「子ども110番の家」の周知を目的とした歩こう会も行っている。

行事は多い。ところが子ども向けでも参加者が少ないという地域共通の悩みを抱えている。「各行事への参加者数は会員の半分以下。特に中学生が行事に参加しない。大人で見られる協調性のなさが、子どもたちにも影響しているのではないか。地域行事への参加は住宅世帯と持家世帯でも違いがある」(當郷さん)。住宅世帯の場合、親の出身地で行われる行事の方へ出向く傾向にあるという。

當郷さんは話す。「子どもたちの地域への関心を高める上で今回の取り組み(ごみ捨て代行)は画期的。勝村さんの事前説明を聞いて、こういうやり方があるのかと感心した。子どもたちの反応も良く、子ども会として積極的に関わっていくことになった」。

代行事業の委託先第一号となった浜里町子ども会。當郷さんは続けた。「これまでの活動により子どもたちは、自分がやっていることが困っている人の手助けになることに、やりがいを感じるようになってきている。活動が広がることで子どもたち全体が地域に関心を持つようになれば、この地域も変わっていくのではないか」。

▽地域性

子どもたちが主役となっている下方地区の地域支え合い活動。奄美市では8地区(笠利、住用は1地区ずつ)でこの事業(地域支え合い体制づくり事業)が進められている。

市高齢者福祉課によると、体制づくりの中心的役割を担う「生活支援コーディネーター」は市全体の総括者が一人、勝村さんのように地区ごとにも配置している。「それぞれのコーディネーターは地域に出向いて高齢者の困りごとなどを把握、住民同士の話し合いで課題解決の方策を探っている。いずれの地区も地域性がある。住民同士のつながりが強い笠利・住用地区、逆に希薄な市街地など。地域性に合わせた支え合い活動を展開してほしい」(島名博美・高齢者支援係主幹)。

まずは地域性を的確に捉えることだ。その上で適した活動を進める。地域での支え合い活動が一部にとどまるか、それとも全体へと波及するか。これが「地域福祉=地域づくり」の岐路だろう。