約12年ぶり「地引き網漁」復活

 

約230人が参加した海岸クリーン作戦(写真上)と、約12年ぶり復活の地引き網漁体験=7日、徳之島町花徳浜

230人クリーン作戦も
徳之島町花徳浜

【徳之島】徳之島町花徳(けどく)の「花徳浜」で7日午前、花徳青年団(芝田竜星団長)主催の「地引き網漁」が約12年ぶりにあった。ゴールデンウイーク最終日の行楽も兼ねた家族連れなど約230人が参加し、漂着ごみの収集など環境美化奉仕にも協力しつつ、心を一つに伝統漁法を体験した。

花徳青年団は花徳小校区の4集落(前川・新村・上花徳・轟木)の各単位青年団の合同組織。人口減に歯止めがかからない中で花徳地区(前川・新村・上花徳)の3集落青年団は昨年、伝統の「豊年祭」(6月)の合同開催に移行。地域の活性化を願う花徳青年団の結束力と行動力はさらに高まり〝島内最強〟の呼び声が高い。

その後輩らに伝統の「地引き網漁」の復活体験を持ちかけたのは徳之島観光連盟の保洋明事務局長(61)=花徳出身。奄美群島国立公園指定に続き世界自然遺産登録を目指すなかで、「埋もれた観光資源の発掘。オプション商品化などを検討して観光客にアピール」するのがねらい。

サンゴ環礁のない砂地で遠浅傾向の花徳浜では古くから、新村集落を中心に地引き網漁が盛んに行われてきた。食生活にも直結した目的の漁は途絶えて半世紀前後らしいが、海の幸を調達して親睦交流を深める「漁(ぎゅう)なぐさみ」で復活体験して以来約12年ぶりという。

参加者たちは午前8時ごろからまず、花徳浜に分散して漂着ごみを拾い集め分別するなど、美しい海浜環境の保全に協力した。この間、青年団員たちは漁船を使って沖合いに長さ約40㍍(タテ幅約2・5㍍)の網を仕掛けた。両端から伸びたロープと網は児童生徒ら若者が中心となって力を合わせて引いた。残念ながら獲物はリリースサイズのみで、海鮮料理はお預けとなったが、貴重な体験となった。

地元の元建設業・太利範臣さん(86)は「昔は、地引き網組合を中心に住民総出でにぎやかに行われ、網の中で魚が飛び跳ねるのが楽しかった。懐かしい」。青年団メンバーの井出一志さん(32)=新村団長=は「今の小中学生は初めての経験。魚が獲れた・獲れないは別に、貴重な体験になったと思う。せっかく海のある地域なのでこの伝統を大事にしていきたい」。7月の「海の日」をめどに一般島民対象のイベントも検討するという。