常田さんギャラリートーク

開館記念企画展でギャラリートークを行った常田さん

奄美の自然の価値を見直して
世界自然遺産へ「島の人の意識が大切」

奄美市立奄美博物館(久伸博館長)は11日、同館で開館30周年記念企画展に合わせたギャラリートークを実施した。イベントには、講師の自然写真家・常田守さんの同級生や住民たち約90人が参加。講師から写真を撮影した時のエピソードや奄美の希少種などの解説が行われ、国立公園に指定され世界自然遺産登録を目指す奄美の自然の価値について認識を深めた。

常田さんは、奄美市名瀬出身。1980年にバードウォッチングのためにUターンし、以来36年もの間、奄美の動植物や風景写真などを撮影し続けている。先月28日から、同館で写真展「24時間365日眠らない奄美大島の自然の魅力」に作品約60点を出展していた。

今回のイベントは、住民が普段なかなか体験する機会のない奄美大島の自然の奥深さを、撮影者の常田さんに解説してもらうことで奄美の自然への理解を深めてもらう目的。事務局の進行でイベントが開始され、各作品の前で参加者は常田さんから解説を受けた。

常田さんは新緑の奄美の森の作品の前で、時間を多めに割いて解説。参加者にシイの花が黄色であることや、「花が咲いてその年に実がなるのではなく約2年(18カ月)かかることでシイの不作・豊作が発生する」とレクチャーした。

また作品の端に映り込んだ松枯れを、常田さんは森の回帰運動(元のシイの森に戻る)の過程と説明。参加者からは、「松(リュウキュウマツ)を陽樹(日差しを好む樹木)としたが、他にはどんな樹が陽樹なのか?」などの質問もあった。

ハブの写真撮影時の体験談では、ハブが持つ熱を感じる器官ピットに注意して攻撃されないよう苦戦したことなどが報告された。また、「外来種のクマネズミはハブが捕食するので、ハブだけが駆除している」とした。

常田さんはイベント終了後に、写真展で「奄美の人に奄美の島はどういう島なのか。まず島を知って欲しかった」と語り、「文化も自然もすごい。多様性が作る生態系が一番すごい」と述べた。

「島の人の意識が大切」とした常田さん。島の自然をどう考えるか。自然の保護なくして観光はありえないとした。

世界自然遺産については、実現したら奄美の人々の意識が問われることになるとし、参加者に「奄美の自然の価値を見直して、できるだけ本物の状態で次の世代に引き継いでいこう」と呼び掛けた。