新品種「津之輝」は生産の安定へ栽培技術の確立が課題となっている(県農業開発総合センター大島支場内での栽培状況視察)
奄美大島と喜界島を対象地域にしている県園芸振興協議会大島支部(支部長・宝正己県大島支庁農政普及課長)は、2017年度活動計画で重点品目に野菜「カボチャ、トマト、インゲン」、花き「キク、スプレーギク」、果樹「タンカン、津之輝、マンゴー、スモモ、パッションフルーツ」を掲げている。このうち果樹で新規品目として導入された中晩柑品種の津之輝は、「奄美つのかがやき」のネーミングで初の共販出荷に取り組むが、量の確保が課題で、実証・展示ほの設置で生産技術の安定を目指す。
先月末にあった17年度同支部総会で活動計画・収支予算などが承認された。事務局の大島支庁農政普及課によると、津之輝は奄美大島での適地性も良好で、露地栽培で歳末需要がある年内に出荷できる高品質な柑橘=かんきつ=品種であることが確認できた。しかし、かいよう病耐性がやや劣り、葉肉崩壊症、腐敗、裂果といった生理障害などの解決・軽減しなければならない課題も見つかっているという。
そこで津之輝の課題と目標では「安定生産技術の確立(タンカンに次ぐ柱の育成、選果場利用度向上)」、対策として「実証活動展開」を挙げる。JAによる共販を軌道に乗せるためにも生産技術向上・安定で量の確保が前提となる。高品質果実の安定生産のための実証・展示ほは、奄美市住用町(内容=幼樹からの有効な樹形仕立法・適正着果量の把握)、瀬戸内町(同=施肥体系の違いによる収量・品質の比較)の2カ所に設ける。
量が確保されることで、共販が条件となっている奄振事業の農林水産物輸送コスト支援事業の対象品目指定が見込める。宝支部長は「奄美での津之輝栽培は、露地栽培でも他の産地より早く、年末贈答用として高値販売が期待できる年内に出荷可能なのが最大の魅力。生産者・関係機関が一体となって販売対策にも取り組んでいるが、まずは生産の安定による量の確保を目指し、その上で輸送コスト支援対象品目指定を働きかけていきたい」と話す。
果樹関係ではこのほか新規に、在来柑橘産地生産体制の整備に乗り出す。喜界島で主に庭先栽培されているケラジミカンやシーク―が対象で、園での栽培に向けて栽培暦作成に取り組む。
野菜ではカボチャで新たな取り組みがある。抑制・早熟のマルチ栽培(畝を被覆しての栽培)で、価格の低下(3倍から1・6倍に)に伴い生分解性マルチ利用の検討を実証・展示ほで行うもの。慣行マルチと生分解性マルチでの収量性を比較検討するほか、作業性を確認していく。