奄振審議会

質疑応答が活発に行われた奄美群島振興開発審議会=霞ヶ関の合同庁舎2号館地下会議室にて

奄美空港ターミナルビル 観光情報発信基地化
自然遺産登録「伝統文化の保存・伝承も重要」

 
【東京】第107回奄美群島振興開発審議会が16日、国交省の地下会議室で開かれた。委員11人(奄美からは伊集院幼大島郡町村会会長、平井美保子女性農業経営士、本部玲子女性農業グループ「スマイル」代表)の中から会長に原口泉志学館大学人間関係学部教授を再任、2018年度末で期限切れとなる奄振法の再延長をにらみ、16年度に奄美群島の振興開発に関して講じた施策が報告された。質疑応答では「奄美全体のビジョンとそのイメージは」「世界自然遺産登録のための目玉商品は」「交流促進事業などはハード、ソフト両方で進めるべき。人材育成は」などの質問がだされ、奄美トレイルルート整備や、気軽に自然を感じてもらえる拠点となるセンター整備などの構想、子どもに対して地域の魅力に触れる体験学習などを具体的に行っている徳之島の例などが紹介された。

冒頭あいさつにたった、田中良生国土交通副大臣は「復帰以来、着実に進められてきた奄美群島振興開発だが、14年度に法改正された交付金制度が18年度末で切れる中、奄美の活性化について活発な意見を」と語り、三反園訓鹿児島県知事の代理で出席した岩切    剛志副知事は「奄美の情報が急激に増えている。離島行政の交付金制度により、奄美は人が増え、レンタカーが増え、様変わりした。交付金効果を実感している。「西郷どん」(NHK大河ドラマ)や世界自然遺産登録認定予定、大型クルーズ船寄航などの追い風のなか、奄美群島のさらなる振興について議論を」と話した。

この後、奄美群島の概要及び最近の動向について国土交通省から説明、16年度奄美群島の振興開発に関して講じた施策が報告された。それによると、農業では国営かんがい排水事業や平張ハウス、バレイショ、サトイモ選別機等が農業創出緊急支援事業によって実施。観光交流人口増加に向けた施策として、観光物産誘客プロモーション事業、奄美群島ブランディング向上事業を展開。交通施設の整備としては、奄美大島で奄美空港、名瀬港、宮古崎トンネル、深山トンネル、津代トンネルの整備実施。このほか航空・航路運賃軽減事業、ドクターヘリ基地ヘリポート整備などが報告された。

原口会長は「奄振事業の総合調査のヒアリングに関係者が取り組んでいるが、ファクトファンディング(実態把握調査)で行うことはこれまでの開発になかったこと。これを起爆剤として奄美の環境文化型世界自然遺産登録は、島唄や大島紬など価値のある伝統文化の保存、伝承も重要なファクター(要素)になる」と語り、城海南さんなどの島の歌手や唄者も含まれると語った。

各委員からは「今年のタンカンは大豊作で価格が暴落し、販路先もなく廃棄する状況となった。輸送支援などどうにかできないか」との質問に「価格を支えるのは厳しい」との回答があり、また「サトウキビの病害虫防除についてドローンの活用はできないか」との問いには、「ドローンの使用はまだできないが、自治体の農家に研究状況を伝えているので、徳之島などの県農業開発総合センターに確認を」との回答があった。

観光物産については、多くの質問が出された。これに対しては観光と仕事、生活ができる雇用体制を農業なども含めて整え、18年夏に完成する奄美空港ターミナルビルに観光情報発信基地をハードソフト両面で対応できる窓口を設ける予定との説明があった。

また、伊集院大島郡町村会会長は「着実に成果が出ている。地域の特性を生かして、訪れた人に奄美の伝統文化のよさをどう伝えていくか、受け入れ態勢が大切。地域の子どもにも伝えていきたい」と話し、藤井健国土交通省国土政策局局長は「奄美は宝の群島。国民一人ひとりが守っていこうという思いが結実しているということを忘れず、奄美を出て行っても帰ってこられる地域づくりを地域の皆さんが努力しないと、宝を掘り起こせない。宝をわかちあえるように」と語った。