ギャラリー日比谷で「村上弘人展」

大きなカンバスに描かれた多くのチョウと奄美の海の作品「花譜」サブタイトルは「パラダイス」を囲んで、村上さんと福島から上京した両親の俊弘さんとキミ子さん、左側が妻の六月さん。大空=そら=君とバギーで寝ている天海=まみ=さん家族が勢ぞろい

村上さん作品展2
故郷福島の桃が咲く頃出現する吾妻山の種まきウサギを描いた「花譜」「種まきウサギ」

 

奄美と福島、二つの故郷への思い描く
自然への「考え方や敬い方とても好き」

【東京】奄美の自然を数多く描いた「村上弘人展」が、ギャラリー日比谷(千代田区有楽町1-6-5)で21日まで開催されている。ギャラリーには多くの在京奄美関係者が訪れ、油彩とテンペラを使用した下がり花や月桃、ハイビスカスとアサギマダラなどの作品を鑑賞していた。村上さんたちは8月6日から27日まで、田中一村記念美術館の特別展示室でグループ展を開く予定。

村上弘人さんは、福島県伊達郡国見町に生まれ、東京芸術大学大学院美術研究科油画専攻の画家で、数多くの同級生や世代の近い画家仲間と海外含めてグループ展を開き、2008年に日本・フランス交流美術展が田中一村記念美術館で開催されたときに、フランス語の通訳で会場の手伝いをしていた奄美出身の楠田六月=むつき=さんを見初め、結婚した。

「奄美の人たちの自然への考え方や敬い方はとても大好きで、土着の祭りや、動植物など奄美にしかなので、絵を描くおいしい材料が数多くあると思います」と村上さんは奄美のことを熱く語るが、被災した故郷福島のことについて「従兄弟が相馬で無事だったが、船が流されたとか、除染とか聞くとさみしいですよ。桃は安い値段でしか売られていないし、あんぽ柿にする柿は収穫されずに木に残っていたり…」とせつない思いを抱きながらも今回の作品展で、故郷・福島の花見山公園の桃源郷や吾妻山に種まきウサギが出現する様を、明るいピンク色を多用した作品に仕上げて2点出展している。

また、今回からアサギマダラが多く描かれているのは「奄美に関係のある島尾敏雄さんの故郷・相馬市や、いわき市長だった奄美出身の田畑金光さんなどの足跡もたどってきたこともあり、渡りチョウのアサギマダラの発見場所の北限が福島と聞いて、奄美とのつながりがあるのを架け橋のように描いています」と二つの故郷への思いを寄せている。

作品展は21日が最終日となるが、奄美から義父(楠田哲久さん)が上京するので、「義父に合わせて島の人が大勢来ると思います。楽しみにしています」と目を細めた。