NPOが『奄美の相撲読本』作成

『奄美の相撲読本』を作成したNPO法人奄美島おこしプロジェクトの伊波理事長(右から)、
内堀亮太理事、大田事務局長

歴史と儀式も紹介
「地域の文化見つめ直して」

NPO法人奄美島おこしプロジェクト(伊波興一郎理事長)は22日、県大島支庁記者クラブで会見し、奄美の相撲の歴史と豊年祭で行われる奉納相撲などをまとめた冊子『奄美の相撲読本 日本一土俵の多い島奄美』を800部制作し、群島内の小中学校(各5部)や公民館などに無料配布すると発表した。冊子の配布により、伝統文化の振興や保存伝承を図る目的。事務局は冊子を活用してもらい、「自分たちの地域の文化を見つめ直して」と期待している。

同プロジェクトは、奄美の宝(魅力)を発信して地域の活性化につなげる目的。これまでに、島口ラジオ体操や島口ことわざかるた作成などに取り組んできた。

琉球大学の津波高志名誉教授によると、奄美には各集落に土俵が必ずあってその数は120以上(奄美博物館調査)で「日本一土俵の多い島」と考察。相撲が盛んな奄美だが、相撲を積極的に習う子は減少してきて、各集落に伝わる豊年(奉納)相撲も簡素化され伝統文化の継承が危惧されているとした。

冊子はB5判オールカラーで、全76ページ。奄美市紡ぐきょらの郷づくり事業と県地域貢献活動サポート事業の助成金を活用。前半部で奄美の相撲の歴史を取り上げ、後半は日本相撲協会が定める決まり手(82手)などをオリジナルイラストで解説している。

大田美紀事務局長は奄美の相撲について、国技になった「大和相撲」は女人禁制だが、奄美の豊年相撲は琉球から伝わった影響か「ノロ」によるしきたりが見られると報告。冊子では大和村大棚集落の豊年祭相撲を取り上げ、ノロ(女性神役)がトネヤから神道を通り土俵を清める一連の儀式を紹介している。

事務局は、2020年開催予定の鹿児島国体(同市住用町で相撲競技)の機会を活用する方針。冊子で子どもたちの相撲に対する興味関心を高めて、「相撲にまつわる伝統文化の継承の機運醸成に努めていきたい」と語った。